妻の働く意欲を奪う!いつか来る「夫の転勤」 「夫婦セットで転勤」を認めるP&Gの真意

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一方で、リモートワークやテレビ会議ができる仕組みが整ってきた中で、そもそも休むのでも辞めるのでもなく、配偶者の転勤にあわせながら「働き続ける」という選択肢もこれから出てくるはずです。

転勤にはついていく、でも働き続けるという選択肢

私が今の会社に転職を決めたとき、代表の佐々木に「2人目妊娠を考えている」と話したことは第8回で書きましたが、実はもうひとつ相談していたことがありました。「もし、夫の転勤があったら」ということです。

そのときの私のマインドとしては、子供が小さいうちであれば家族一緒に生活したい、自分の視野を広げるためにも住む場所を動くのはいいと思う、でもそうしたらせっかく転職した会社を辞めないといけないだろうということでした。

佐々木の回答は、私にとっては目から鱗でした。「何が大事?家族と一緒にいるのが一番大事だったらそうすればいいし、仕事がしたいなら仕事できる方法を考えればいいんじゃないの?もちろん、いつから行くかと行き先にもよるけど、一年のうち半年は東京(日本)で対面じゃないとできない仕事をして、半年はそのレポートを夫の転勤先で書くような働き方をするとか、基本は転勤先に拠点を置いて、東京(日本)出張をしまくるとか」。

「えええ、そんなのありか」と思いました。実際は第2子妊娠も考えれば本当にそれができたかは子育ての面でかなり大変そうではありますが、それでも、「そうなったら、そのとき考えればいい」と思えたことは、先の見えない未来に対する気持ちをとても明るくしました。今「夫が転勤したらどうするの?」と言われたら、私は「家族で一緒にいながら仕事もできる方法を考えるよ」と自信をもって言えます。

私がこれまで取材した大企業の中で、配偶者の転勤先でも働けるという選択肢を出しており、こうした転勤問題への対応が圧倒的に手厚いと感じたのはP&Gです。P&Gでは配偶者の転勤があった場合、本人が希望すれば、まずその転勤先で働ける可能性がないかを探ってくれるといいます

特に社内婚の場合、一方に転勤の可能性が出た時点で上司と配偶者の上司が話し合い、どちらがLeading Carrerなのか、ビジネスニーズと本人の興味でアレンジを試みるそうです。国、行先、職種によっては調整が難しく、その場合は休職もできます。それも「最大何年」と決まっているわけではなく、会社と個人のニーズを含め、その時の状況に応じてフレキシブルに対応するとのこと。

自身の転勤については、子どもが学期の途中で転校するのがストレスになるようなら数カ月遅らせてもらうなどということも相談可能。行った先で子どもが通うインターナショナルスクールなどにかかる費用は、必要な学費であれば全額出してくれるそうです。単身赴任で行く場合は、そのサポートとして二重家賃の補助はもちろん、1カ月に1回の帰国費用を交通費として支給してくれるといいます。

どうしてここまで手厚いのでしょうか。

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