富士ソフト「物言う株主」に翻弄された数奇な運命 ファンドの争奪戦で創業家と会社が対立構図に

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非公開化について、独立系にこだわってきた創業者の野澤氏は会社同様、もしくはそれ以上に複雑な決断を迫られたはずだ。野澤氏が株を売ることになれば、50年超にわたり人生をかけてきた会社と資本的なつながりが絶たれることを意味するからだ。

そして9月に入り、ベインも富士ソフトの賛同が得られればTOBを実施する意向を表明した。ベインは3Dが独自に買収提案を募集した経緯などから、富士ソフトが当初非公開化を望んでいないと判断し、十分な提案を行う機会が得られなかったと主張している。富士ソフトが主体性を発揮しないまま、アクティビストが先導する形で始まったように見える異例のプロセスが、想定外の混乱を招いたといえる。

ベイン側についた創業家の意図は

ベインの動きに対抗するかのように、KKRはTOBを前倒しで実施することを発表する。同時に富士ソフトが9月4日に開示したリリースには、「(ベインによれば)創業家株主がベイン以外との間で、ベインによる当社の非公開化に関する一連の取引と競合、矛盾もしくは抵触し、又はその恐れのある一切の行為を行わないことに合意している」との記載が盛り込まれた。

ベインの提案を受け入れたほうが創業家にとって売却価格などの条件面でメリットがあると判断したのか、それともアクティビストに先導される形での会社による非公開化の決断を容易に受け入れがたかったのか――。

創業家の意図は不明だが、いずれにせよ、現時点でKKRの提案に賛同し、TOBへの応募を求める会社側とは対立する構図に発展した。東洋経済は一連の動きが明らかになる前に野澤氏に書面で取材を依頼していたが、9月11日までに応答は得られなかった。

アクティビストに翻弄された末に、半世紀以上維持してきた「独立系」の御旗を下ろそうとしている富士ソフト。その数奇な物語は、いったいどのような結末を迎えるのか。KKRのTOBが成立するかが、目先の焦点となる。

茶山 瞭 東洋経済 記者

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ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、通信業界とITベンダー業界を中心に取材。メディア、都市といったテーマにも関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んだ。

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