三菱重工の好調支える「寄せ集め部門」の凄み 連結営業利益の3割を占める"隠れた柱"に

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1つは再編による主力事業の規模拡大。今年1月に製鉄機械を独シーメンスと統合したのに続き、7月にはフォークリフト事業で産業革新機構傘下のユニキャリア買収を決定。三菱重工はフォークリフト事業を今後のグローバル伸長事業として位置付けており、傘下のニチユ三菱と共同でユニキャリアを12月に買収する。

一方、単独では安定した収益貢献が期待しづらい小規模事業についても、再編による再生、生き残り戦略を推し進めている。橋梁は今年4月に宮地エンジニアリングと事業を統合。搬送システムは住友重機械工業、トンネル工事用の地中建機事業もIHI子会社との統合をそれぞれ決めた。いずれも合弁会社のマジョリティは相手側が握り、三菱重工としてはメンツより実(=再編によるシナジー効果)を取った格好だ。

継続事業も社内統合でメリット追う

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三菱重工メカトロシステムズは煙突や駐車場設備、水処理プラント、自動車試験装置など、20以上の製品・分野をまとめて手掛ける

社内に残した事業も、特定の事業会社に集約して相乗効果を引き出そうとしている。その典型が三菱重工メカトロシステムズだ。

水処理や文化施設、排ガス処理装置などを手掛けていた同子会社は昨年、グループ内の事業再編で駐車場設備、煙突、免震・制震装置などを新たに吸収。さらに今年秋に油圧機械や加速器、ITS(高度道路情報システムズ)事業も引き受けることが決まっており、担当領域がさらに広がる予定だ。

これらの分野を単純合算すれば、メカトロ社の売上高は700億円、営業益は70億円前後になる見込みだ。ただ、事業の中身は国内の成熟したニッチ分野が大半。それぞれの製品・分野だけでは規模が小さすぎて、効率化の余地も乏しい。そこで1つの会社でまとめて手掛けることで、可能な限り、規模のメリットを追求しようというわけだ。

同社の渡邊望社長は言う。「これだけ多くの製品、カテゴリーがあると、技術が似通っていて設計陣を融通し合ったり、同一の顧客へまとめて営業できる部分も出てくる。営業所だって、地域ごとにまとめればいい。知恵を絞って、そういった工夫をやっていくことで効率化を進めたい」。

三菱重工全体の今後数年の業績を考えると、4つの部門のうち、交通・輸送部門は小型旅客機「MRJ」の開発費や量産投資負担が重い。そうした中にあって、全社利益を伸ばして行くには、機械・設備システム部門のさらなる収益拡大が不可欠になる。巨艦・三菱重工の業績は「ミニ重工」部門の奮闘にかかっている。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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