三谷幸喜「5年ぶり新作」に入り交じる期待と不安 「スオミの話をしよう」は傑作となるか、酷評か
本作には、演劇界出身の三谷監督らしいこだわりがあふれている。ほぼ屋敷内のワンシチュエーションで、登場人物たちの会話劇を中心に回想シーンが織り交ざって物語が進んでいく。まるで生の舞台を見ているかのような芝居が存分に堪能できる作品だ。
こうした会話劇をメインにする映像作品は少なくないが、本作が特徴的なのは、とにかく登場人物1人ひとりのセリフが長く、シーンはカットを割らず、長回しで撮影されていること。それにより、舞台演劇の臨場感と緊迫感がスクリーンを通してひしひしと伝わってくる。
本作でこうした演劇的な映画を撮るための撮影スタイルにこだわった三谷監督は、芝居に厚い信頼を置く俳優たちをキャスティングし、映像作品としては異例の撮影1カ月前からのリハーサルを敢行した。
スオミ役の長澤まさみのほか、超多忙な日本のエンターテインメントシーンを牽引するトップ俳優たちと三谷監督による、1カ月にわたる入念なリハーサルが行われたのだ。本作は、そのセッションがあったからこそ成立したであろうクリエイティブの光る映像作品になっている。
三谷作品の集大成となる傑作か
実際に本作の予告映像は笑えておもしろい。とくに5人の男たちの「おっさん、2枚目、おっさん〜」のくだりがウケているようだ。SNSのリアクションを見ると、20代女性層をはじめ、若い世代がおもしろがっているのがわかる。
近年のヒット作による三谷人気の拡大に加えて、さまざまなメディアで露出されている本映像などから、すでに本作への関心は大きく高まっていることがうかがえる。
では、すでに鑑賞している人の声はどうだろう。
三谷監督は今年7月、韓国で開催された『第28回プチョン国際ファンタスティック映画祭』で、マスタークラス講演の講師“コメディ映画の巨匠”として招聘された。そのステージで同映画祭ディレクターは、本作を「これまでの三谷作品の集大成となる傑作」と評価していた。
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