がん患者の悩みに寄り添うプロの「伴走者」 医療コーディネーターを知っていますか?

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MCに必要な知識を得るため、研修を受ける。看護師、介護士、製薬社員などが「患者のためになりたい」と全国から集まった

MCはボランティアではなく、依頼費は同協会の場合1時間1万800円。その後30分ごとに5400円がかかる。安くはないが、医療知識を持ち、伴走者のように患者の日常を支えてくれる人はそういない。現在、同協会の認定MCは約100人。「認定」と名乗る場合は、医療や福祉資格を持つ人に限る。

栃木県在住の木原明子さん(52)は協会に相談し、がん患者の悩みを聞く「がんサロン」を開いた。MC活動のひとつだ。

木原さんは48歳の時、突然舌がんを宣告された。受験を控えた2人の子どものことを考えると心が痛んだ。それでも落ち着いて抗がん剤治療と手術を乗り越えられたのは、看護師の妹の存在が大きかったという。

医療と福祉をつなぐ

「治療法の相談をしたり、主治医との面談に同席して専門的な説明をわかりやすく解説してもらったりしました。思えば妹が私のMCだったわけです」

と木原さんは振り返る。「信頼できる理解者・医療者の存在」がこれほど心の支えになるとは。そう痛感した。

「医療者と患者の信頼関係は、対話して心を通わせることから始まる。日本の医療現場は忙しすぎて、その根本的なことができていないと思う」(木原さん)

サロンでは、必要に応じて専門知識を持つMCや医療機関を紹介する。悩みを聞くだけで患者や家族は冷静さを取り戻せる。木原さんは、MCがもっと一般的になって、全国的な仕組みになることを願う。

市民医療協議会がん政策情報センターが行った「がん患者意識調査2010年」で、「がんの診断や治療で抱いた悩み」で最も多かったのは、「痛み、副作用、後遺症などの身体的苦痛」で60.5%。続いて、「落ち込みや不安、恐怖などの精神的なこと」で59.3%だった。心のケアのニーズは高い。

北里大学医学部附属新世紀医療開発センターの荻野美恵子講師は、今後MCの必要性が高まると見ている。高齢化により最後まで自宅で過ごす人が、ますます増えるからだ。地域医療の仕組みを強化すべきだという。

「ソーシャルワーカーやケアマネジャーなどは医療や介護の制度には詳しいが、医学的な視点は弱い。地域に根ざしたMCと連携することで、医療と福祉の両面をつなぐ人材ネットワークが地域にできる。これは患者や家族はもちろん、医療者にとってもメリットです」(荻野さん)

病は突然やってくる。そのときMCという存在が、闘病生活と人生を支えてくれる。

(編集部・吉岡秀子)

※AERA 2015年9月7日号

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