がん患者の悩みに寄り添うプロの「伴走者」 医療コーディネーターを知っていますか?

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以来、MCには検査結果を聞くのに同行してもらったり、新しい治療法を教えてもらったり。不安な時に連絡を取る。ひとりで闘っているんじゃない、と思えることが回復力をアップさせるようだ。

相談内容はさまざまだ

そもそもがんと闘うには、医療の力だけでは不十分だ。病気からくる不安や、闘病生活の悩みなどを相談する相手が必要になる。だが多くの場合、忙しい担当医に長時間かけて相談はできないし、プライベートな問題を医療現場に持ち込むことは気が引ける。そんな医療の枠を超えたサポートができるのもMCの特徴だ。

税理士の女性(60)は、婦人科で「卵巣が腫れている」と、がんの疑いを指摘された。手術を受けることになったが、2人暮らしの90歳の母親が手術中、病院で待つという。

「ひとりで大丈夫だろうか」

そこで知人のMCに母の付き添いを頼んだ。病院で母の話し相手になってもらう。MC用語で「傾聴」と呼ばれる「相手を落ち着かせるためにじっくり話を聞く」役目だ。女性も安心して手術に臨めたという。

患者の小さな悩みも聞き入れる。それが医師でもない、家族でもない相談者として、MCが注目されてきた理由だ。

10年前からMCとして活動している同協会理事の高橋菜子さんによると、患者からの相談は次の四つが多いという。(1)主治医との関係づくり、(2)治療法など意思決定の際のサポート、(3)家族や仕事などの悩み、(4)生活や食事の指導。

気兼ねない第三者

相談によっては、がん相談員やソーシャルワーカー、栄養管理士などに相談することもできるが、多くは院内でのサポートで、受付時間も限られている。その点、MCは個人が独立して活動しているため、いつでもどこでも対応してくれる。医療の“顧問弁護士”のような存在といっていいだろう。

実は、患者の悩みで深刻なのは人間関係だ。家族と主治医が合わなかったり、幼い子どもや介護が必要な親がいたりする場合など、患者は自分の病気よりも周囲に気を使い疲れてしまう。

「こうしたことは気兼ねのない第三者が介入したほうがうまくいくケースが多いんです。MCの基本は、患者さんの心身のバランスを整え、自分で納得して治療を受けられるようにすること。心に寄り添い、できる範囲のことはすべてします」(高橋さん)

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