メルカリが台湾へ、透ける「米国リストラ」の教訓 アプリも現法もなし、リーズナブル設計がカギ?

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1つ目が、効率的なリソースでの事業展開だ。台湾への進出に際しては、イギリスやアメリカのような現地法人は設けず、スマホアプリも展開しないため、人件費や開発費などが抑制されている。

一方で、自社サイトならではのUI・UXを提供することや、独自のキャンペーン展開は可能となる。顧客データも直に手に入るため、将来的な現地でのサービス拡大に向けた布石ともなる、“リーズナブル”な展開なのだ。

メルカリの台湾サイト(左)と、越境ECで人気が高い出品アイテム(右)(記者撮影)
メルカリが台湾で立ち上げた自社サイトのイメージ(左)と、越境ECで人気が高い商品の一例(記者撮影)

2つ目が実需へのフォーカスだ。進出から10年が経つアメリカでは、商品の出品・購入の双方が可能となっているが、今年3月には出品手数料の無料化に踏み切るなど、出品の活性化に苦心している。

対して今回の台湾進出に当たっては、現地での出品機能を用意していない。無理にフルスペックのサービスを提供するのではなく、需要が明確に見えている購入に特化した。「購入も出品もやるかたちで進めると、どうしても時間がかかってしまう。会社としていろんな新しい取り組みをスピード感をもって進めていきたいので、まずは最速で購入を実現しようと考えた」(迫氏)。

課題は「もっと早く」「大胆に」

今後は台湾と同様のスキームを用いて、越境ECによる海外進出を加速する方針だ。需要がみえてきたエリアでは、出品機能の追加も検討する。

ほかにも、韓国のフリマアプリ「雷市場(ポンジャン)」と、現地で出品された商品を日本の消費者がメルカリ経由で購入する実証実験を進めており、これについても将来的に横展開していく計画が公表された。

金融事業の成長などが牽引し、メルカリの全社業績は堅調に拡大している。ただ、国内フリマアプリのGMVの成長鈍化や赤字を垂れ流すアメリカ事業が不安要素となり、株価は今年に入って過去最安値近くまで落ち込む場面もあった。

山田CEOは今年8月、東洋経済のインタビューに「海外・国内ともにすごくポテンシャルを感じているので、もっと早く、大胆なことをするというのが、今の組織的な課題だ」と語っていた。今回、越境ECに関する矢継ぎ早の展開はもちろん、その実現に向けた「スピード感」を重視する発信からは、同社の本質的な軌道修正も感じられる。

世界の壁にぶち当たったメルカリが、再起に向けて繰り出した台湾進出。その成否が、成長の再加速を懸けた試金石となる。

東洋経済オンラインのデジタル特集メルカリの反省」では、山田進太郎CEOへのインタビューなどを掲載しております。※全文閲覧には会員登録が必要です。
アメリカで大リストラ、成長株「メルカリ」の反省
メルカリ創業者「米国リストラ」と「社風」への猛省

 

森田 宗一郎 東洋経済 記者

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もりた そういちろう / Soichiro Morita

2018年4月、東洋経済新報社入社。ITや広告・マーケティング、アニメ・出版業界を担当。過去の担当特集は「サイバーエージェント ポスト藤田時代の茨道」「マイクロソフト AI革命の深層」「CCC 平成のエンタメ王が陥った窮地」「アニメ 熱狂のカラクリ」「氾濫するPR」など。

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