人口8000万人時代の日本が直面する「危険な状態」 北海道には既に「空白地帯」が発生している 

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ローカルの力とマイルドヤンキー──佐藤

人口減少に関連して、私は「マイルドヤンキー」と呼ばれる若年層に注目しています。マーケティングアナリストの原田曜平さんが名づけ親ですが、北関東の中核都市周辺に住み、高校を卒業後すぐに結婚して子どもを3~4人つくる。「イオンモールがあれば幸せ」と言って東京に出てくることもなく、バンで移動するような人たちです。

新自由主義的な競争原理が進行すれば、「勝ち組」と「負け組」の選別が明瞭化され、「負け組」に入れられた若者は生き残れません。所得水準から子どもをつくることもできない。そう考えると、子だくさんの「マイルドヤンキー」が人口減少に歯止めをかけているのかもしれません。

『自民党の変質』(祥伝社新書)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

彼らは欲望の消費性向こそ強いですが、高望みはしません。従来の不良ほど攻撃性がなく、地元で仲間との絆を大切にします。

また先輩・後輩の繫がりから、人手不足も起きません。先輩たちが仕事の場を提供するからです。彼らは自動車整備工場やラブホテルを経営したり、介護事業にも乗り出したりするなど、多角経営で独自の生態系を形成しています。

そんな地方経営者を、投資家の藤野英人さんは「ヤンキーの虎」と説明します。「マイルドヤンキー」と「ヤンキーの虎」によるネットワークが、100%の就業率と人手不足解消を実現しているのです。

「マイルドヤンキー」たちは、モノを仕入れるのも市場原理とは異なり、仲間内ですませる傾向にあります。さらに、彼らは市議会議員など地域の政治エリートと一体化しています。

私は、こうした地方都市でたくましく生き残る人たちを見て、グローバリゼーションに抵抗しているのだなと思いました。ローカルの力は侮れません。そして、それがまた自民党の支持基盤になっているのです。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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山口 二郎 法政大学教授

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やまぐち・じろう / Jiro Yamaguchi

1958年生まれ。東京大学法学部卒業。北海道大学教授を経て、2014年4月から法政大学法学部教授。専門は行政学、現代日本政治論。

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