国立劇場、再建決まらぬまま休場続く迷走の裏側 休眠中の施設をHISが活用する摩訶不思議

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前述した昨年11月の記事では、現地で建て替えるのではなく、移転の検討をしてはどうかと提案した。半蔵門の当地は、住宅や事務所の立地としては申し分ないが、商業地としては閑散としている。それゆえにPFI方式の入札が2度も不調に終わったという面もある。

築地市場跡地に国立劇場を建設できれば、日比谷の帝国劇場・東京宝塚劇場などの東宝系劇場、東銀座の歌舞伎座や新橋演舞場などの松竹系劇場と、築地の国立劇場が線でつながり、「東京版ブロードウェイ」構想ができあがるのではという意見を紹介した。他の場所に移転となれば、そこでの工事中は現・国立劇場の建物で興行を続け、新たな国立劇場完成と同時にスムーズに移転ができるからだ。

しかしながら、8月21日の方針では現地での建て替えという考えが踏襲されている。

歌舞伎役者の中村時蔵氏は、この件に関して、本年2月16日の日本記者クラブでの、伝統芸能実演家等が長期休場の悪影響を訴えた会見で、興味深い発言をしている。

劇場の担当者に対して、「国立劇場の土地を売り払って、どこか他に行ったらどうか」と言ったら、「やはりここは国立劇場発祥の地なのでどうしても譲りたくない、動きたくない」との返答だったという。

そこで、時蔵氏は仮設劇場の設置を国立劇場側に要望したところ、はじめは、代替えは考えているとのことだったが、後で無理と言われたという。

時蔵氏は、「お金があればPFI方式でやることもない。財政が逼迫しているから、財務省も出し渋っているということもあると思います」と結局はお金の問題であるとの認識を示した。

方針決定プロセスへの疑問

筆者が気になるのは、本件にかかわる政府の方針決定のプロセスだ。

振興会において、PFI手法による事業者選定手続きを進めたが、2回の入札では事業者の選定に至らなかった。その後、2024年3月には振興会に「国立劇場再整備に関する有識者検討会」が、自民党・文化立国調査会には国立劇場建設プロジェクトチーム(PT)が設置され、それぞれから今後の国立劇場再整備に向けた提言がとりまとめられた。

また、こうした動きを受けて、本年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2024」(いわゆる骨太の方針)にようやく、「我が国の文化芸術の顔となる国立劇場の再整備を国が責任を持って早急に行う」ことが明記された。

このような状況を踏まえ、「国立劇場再整備に関するプロジェクトチーム」から8月21日に「『国立劇場の再整備に係る整備計画』の改定に向けた方向性」が発表された。すなわち、国立劇場の建て替えをめぐる実際の方針形成はこのプロジェクトチームが行っていることになる。

筆者は重要な方針決定を行う組織が単なる「プロジェクトチーム」(PT)であることに驚いている。

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細川 幸一 日本女子大学名誉教授

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ほそかわ こういち / Koichi Hosokawa

専門は消費者政策、企業の社会的責任(CSR)。一橋大学博士(法学)。内閣府消費者委員会委員、埼玉県消費生活審議会会長代行、東京都消費生活対策審議会委員等を歴任。著書に『新版 大学生が知っておきたい 消費生活と法律』、『第2版 大学生が知っておきたい生活のなかの法律』(いずれも慶應義塾大学出版会)等がある。2021年に消費者保護活動の功績により内閣総理大臣表彰。歌舞伎を中心に観劇歴40年。自ら長唄三味線、沖縄三線をたしなむ。

 

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