国立劇場、再建決まらぬまま休場続く迷走の裏側 休眠中の施設をHISが活用する摩訶不思議

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立法府ではなく、行政が立法案作成(政府提出法案、いわゆる閣法)や重要な政策決定や変更を行う際には、通常、恣意的な決定が行われるのを防ぎ、民意が反映されるように審議会等の有識者会議が組織され、そこに大臣が諮問し、そこでの答申を受けて大臣が決定するシステムがとられる。

しかし、本件では振興会に有識者検討会はあるものの、その上位の政府の方針決定組織がPTという軽い組織になっている。しかも、その構成員は実務レベルの官僚等がほとんどだ。

このPTは「令和元年10月7日文部科学副大臣決定(令和元年12月10日一部改正)」によるもので、「文部科学副大臣(文化担当)の主宰による、文部科学省、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会その他関係者間による連絡調整を行い、情報共有を図る必要がある」ため、設置するとされた。すなわち、実務者レベルでの連絡調整や情報共有が本来の目的なのだ。

そのPTが今後の国立劇場をどうするかという日本の伝統文化継承にかかわる重要な事項を事実上決定していることは、いかに国、政府、政治家が伝統芸能に理解、関心がないかを示すものである。また、発表方針表明も、主宰する副大臣名でなく、PT名であることは理解できない。

単なる東京の一劇場存続の問題ではない

第三者の立場から現状を危惧し、社会に訴えているのは、児玉竜一・早稲田大学教授だ。歌舞伎を研究し、早大演劇博物館館長を務める児玉氏は、各方面のメディアで発言し、日本記者クラブでの会見も主導した。

また、月刊「正論」2024年5月号の特集「国立劇場の再興急げ」ではメインの論考「伝統の灯消える危機感の共有を」を執筆し、国立劇場が日本の伝統の継承にいかに重要であり、このままでは10年近くも休場が続くことの悪影響を切に訴えている。

国立劇場は歌舞伎、文楽などの日本の伝統芸能の興行を主催するとともに、実演家にとっての自らの芸の最高峰の発表の場でもある。そして、甲子園球場が高校球児の、国立競技場がサッカー少年にとっての聖地であるように、そこを目指すことで人材が育つような場所でもあると説く。

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