国立劇場、再建決まらぬまま休場続く迷走の裏側 休眠中の施設をHISが活用する摩訶不思議
変更点としては、民間収益施設の提案条件について必須としていたホテルの併設、地代設定等を自由提案とするなど、「自由度を高める」ことだ。
「再整備の基本的な考え方」は、「国立劇場の奈落にある特殊な舞台構造の更新、楽屋の狭隘解消、稽古場不足の解消、バリアフリー化などの重要な機能改善および長期的なライフサイクルコストなどの観点から、引き続き、現在の敷地において建て替えにより整備する」とした。
すなわち、現施設の改修でも、場所の移転でもなく、現地における建て替えの方針を変えていない。
当初の計画は現施設の改修だった
ちなみに、現施設の大規模改修が最適とする建築家の意見もある(2024年6月14日付朝日新聞記事における建築家・北山恒氏の見解)。
実は、当初の計画では現施設の改修が表明されていた。2016年11月にはじめて「国立劇場等大規模改修基本計画」が発表された。これは大改修を前提とする案だったが、2019年10月に設置された「国立劇場再整備に関するプロジェクトチーム」によって、民間資金を活用するPFI方式を前提とすることが公表された。
要するに、訪日客の文化観光拠点にするため、ホテルを建設した劇場にするとの考えが基本にある。これにより、現施設の改修という方針から、取り壊して建て替えるという方針に変わったのである。
この背景には、2017年に文化芸術基本法が成立し、文化や観光産業の連携方針が打ち出されたことにある。これにより、計画では本来の伝統文化継承目的に文化観光拠点の機能も加えた建て替え方式が示されたといえる。民間事業者の資金やノウハウを活かしたPFI方式を採用し、ホテルやレストラン、カフェなど民間施設も建設し、振興会が事業者から賃料を得るという案だ。
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