政府は本格的除染開始を、一段の遅れは許されない

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飯舘村の住民は、苦難の避難の果てに福島市内や伊達市内の仮設住宅などで暮らしている。ただし、仮設住宅に入居したのは全村民の30%。残りの村民は福島県内の借り上げアパートや県外での暮らしを余儀なくされている。

その過程で、被災前に1700世帯だった同村の総世帯数は、現在2700世帯へと増えた。村では、複数世代が同居する大家族が多かったが、避難生活でそれを維持することが困難になったからだ。仮設住宅や借り上げアパートは手狭で、家族全員を収容し切れない。

また、村を出たことによって職を失った村民たちは、新たな仕事に就くために、家族が離れ離れに暮らす道を選択せざるをえなかった。

一部の仮設住宅団地では、平均年齢が極めて高くなっている。若年・壮年世代は新たな仕事を得るために遠方に転居したものの、仮設住宅しか選択肢のない高齢者も少なくなかったからだ。

しかも、春から夏にかけて、一時的な避難先から最終避難先に落ち着くまで数度の転居が避けられなかった高齢者も多い。そうした過酷な日々を送った彼らに、肉体的・精神的な疲労が蓄積した。その結果、最終避難地に落ち着いた後、健康を害したり、うつ状態に陥ったり、果ては夜間に徘徊行動をするようになった人々も現れている。

というのも、混乱の果てにようやく訪れたのが一日中何もすることなしに過ごす無聊(ぶりょう)の日々。村にいたときには畑仕事などを生きがいにしてきた高齢者も多いだけに、生活の変化はあまりにも大きい。そうした多くの住民たちが唯一の希望としているのは、やはり、村への帰還だ。

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