政府は本格的除染開始を、一段の遅れは許されない

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もちろん、除染には放射性物質の貯蔵施設をどうするのかという大問題を伴う。これまでも仮置き場、中間貯蔵施設、最終貯蔵施設という三つの段階において、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論が繰り返されてきた。しかし、政府が一応の基本方針を決定した以上、現状を放置し続けることは許されない。放射線量の高い地域にとって、その解消が生活安定の基盤であるのは当然のことだが、広く国家的な観点から見ても、国土保全として極めて重要な作業である。

ところが、国会情勢は相変わらず混沌としている。

仮に、第3次補正予算が国会を通過したとしても、関係法案が成立しなければ予算執行はできない。これは菅直人政権による今年度予算成立の際にも大きな問題となった。

政界では現在、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加をめぐって議論が激しく錯綜している。「維新」「開国」などという情緒的で仰々しい言葉が飛び交うほどの混乱である。

それを今さらあらためて批判しても仕方ないが、第一に重要なのは、国会は決めるべきことをきちんと決めるべきだということである。復興予算の成立、福島県などで除染を本格着手するための予算措置は、その筆頭に挙げられよう。

この間、震災復興への政府の動きの鈍さが批判されてきた。この先、もたもたしていると、東北に本格的な冬が訪れる。雪が積もれば、地域によっては、除染もままならない。被災地住民の失望は深まらざるをえない。政治家の良心に訴えたい。

(シニアライター:浪川 攻 =週刊東洋経済2011年12月3日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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