「ブラック研修」を否定しきれない20代男性の本音 研修は朝6時から深夜1時までで、休憩はなし

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退職後は体調回復や転職活動のために半年ほど収入が途絶え、その間に消費者金融から150万円ほど借金をした。数回の転職を経て最近になり、年収約450万円の正社員として働き始めたものの、滞納した家賃や、利息を払い続ける中、まだ借金は返し切れていない。今も本業の合間を縫い、ウーバーイーツの配達や飲食店でのアルバイトをしているという。悪質企業による仕打ちは、今もヨウヘイさんの暮らしに影を落とし続けている。

「受けてよかったとも思っている」

取材で会ったヨウヘイさんは礼儀正しく、話しぶりも的確で巧みだった。アルバイト先の飲食店とは学生時代からの付き合いのうえ、過去の転職先の上司の中には戻ってくるよう声をかけてくれる人もいたといい、周囲からの信頼の厚さがうかがえた。

自らの意見もはっきりと口にするヨウヘイさんとの話の中で最も興味深かったのは、自身が受けた新入社員研修を振り返り、「なんだかんだ受けてよかったとも思ってるんですよね」と言ったことだ。

ここでヨウヘイさんとのやり取りの一部を再現したい。

――受けてよかった? いわゆる“ブラック研修”の典型ですよ。

「でも、あそこで刷り込まれたのは、周囲の期待にこたえること、1位を取るために全力でやること、結果がすべて、といったマインドでした。やり方は極端でしたが、価値観としては間違ってませんよね」

――ただこうした研修の本当の目的は洗脳です。違法なこと、倫理観に欠ける命令でも、会社に従う人間をつくることでは?

「そういう指摘は初めてです……。それでも(刷り込まれた価値観は)社会に出たら持っていて損はない考え方だとも思うんです」

――そうかもしれません。でも、実際に会社がヨウヘイさんにやったことは残業代の未払いにパワハラ、退職強要です。ちなみに会社を辞めたときどんな気持ちでした?

「この会社から逃れられるという安心感と、先輩や同僚に迷惑をかけて申し訳ないという罪悪感がありました」

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