若者の「メンタル崩壊要因」SNSより深刻なもの 世界共通で見られる「有害なメガトレンド」
同報告は、世界各地のメンタルヘルス専門家と経済政策専門家、精神疾患を経験した若者など、総勢50名を超す委員会によって、5年の歳月をかけてまとめられた。
メンタルヘルスとは単に具合が悪くなった人に個人的に対処する問題ではなく、精神的苦痛の原因となる環境、社会、経済、政治、技術上の変化に対して共同で取り組む必要がある問題でもある、というのが著者らの主張だ。
報告で指摘された「メガトレンド」は何十年も前から存在するとはいえ、状況は以前よりも悪くなっている、と著者らは述べている。
経済や環境がらみの要因が大きく影響
新たな治療法やメンタルケア方法への投資だけでなく、「早期介入への迅速な投資が求められている」と、報告の筆頭著者を務めたオーストラリアの精神科医、パトリック・マクゴリーは話す。
「多くの若者が命を落としたり、生活保護を受けたりする事態、あるいは単にまともに能力を発揮できない状態に陥るだけでも、社会のつながりや生産性に深刻な影響が及ぶ。それが今、起こりつつあるのだ」
学界や一般の議論ではソーシャルメディアやスクリーンタイムがもたらす潜在的な悪影響ばかりが注目されがちだが、報告の著者らは、若者のメンタルヘルスの悪化には経済や環境がらみの要因も大きく関係している点を強調している。
報告を作成したランセットの委員会によると、過去20年間の経済動向は、学生ローンの増加、若い世代と上の世代との間の経済格差、就職や職を維持することの難しさ、といった問題につながっている。