明快なCSRビジョンが社員のモチベーションを高める《組織・人を強くするCSR 第7回・最終回》
東日本大震災発生から8カ月以上が過ぎ、「ボランティアの数が減少している」という報道もある中で、企業の息の長い取り組みが続いている。
たとえば、三菱商事は自社グループ社員を20人ずつのチームに編成して、ローテーションを組んで3泊4日のボランティア派遣を続けている。1年間で約1200人の社員が被災地での作業に就く予定で、その様子は月ごとに同社のホームページで発表されている。
息の長い震災支援は社員参加がカギ
参加した社員のコメントを読むと、さまざまな思いを持って作業に当たっているもようが見える。この中に、現地で雨が降り屋外活動ができない社員が、被災家庭に届けるぞうきんを手縫いしているようすが記載されている。こうした地道な活動が次のボランティアを勇気づけ、息の長いCSR活動につながるのだと再認識させられる。
三菱商事では、ボランティアの派遣前にCSR部門が実際に現地に赴き、現地のニーズを十分に聞き取ってきている。どのような活動に従事すれば地元に喜ばれるかを綿密に計画し、さらに社員ボランティアに出発する人々に事前に現地のありさまなどを十分に説明しているそうだ。
この三菱商事の例からわかるように、社員が主役の活動は、周りの社員を感化させ強い組織力となって活動を盛り上げる。この組織力が一時的な活動に終わらず、息長い取り組みの原動力となって現れてくる。これまでES(社員満足度)とCSRの関係(第6回参照)や、CSR活動の活性化が優秀な人材を吸引すること(第4回参照)など、CSRと社員モチベーションの関係を論じてきたが、CSRの最も大切な概念である持続可能性は、社員がいかに自社のCSRを理解し、納得して活動に参加するかで決まることがわかる。