以上は、高度成長期に「二重構造」として問題にされたことである。その後、経済全体の所得水準が上がったために、あまり問題視されることはなくなった。しかし、現実には格差は残っているわけだ。
系列体制では小企業が発展できない
「二重構造」の論議が問題にしたのは、以上で述べたようなことだが、それだけが問題ではない。下請けでは発展の自由がないということも問題だ。
このことは経済条件が大きく変化するとき、とりわけ問題になる。下請けシステムは変化に対する対応性が乏しいのである。
アメリカでも19世紀末から20世紀にかけては大企業の時代であったが、それは90年代ごろから変化してきた。IT革命は小企業の有利性を増した。そして、マイクロソフト、グーグル、アップルなどのベンチャー企業が成長して、新しい時代を切り開いていった。GM、AT&T、モトローラなどの伝統的な大企業は変化にうまく対応できなかったが、小企業が成長することで経済の新陳代謝が進んだのである。
しかし、日本では、そうした企業が現れなかった。それこそが日本経済の最大の問題である。
なぜ、日本でベンチャーが育たなかったのだろうか? 人材の問題も大きいが、日本では小企業は下請けになっているということが大きな原因だ。そして、蛸壺体制のために労働市場が閉鎖的だ。だから、小企業が発展する可能性がないのである。