小林:高校生にも「どうやって大学を選んだのか」聞いてみると、指定校推薦の一覧のなかから、一番偏差値の高いところを選んだという声がありました。それが幸せな選択なのか正直疑問ですよね。
常見:とはいえ、変化の兆しってありませんか。例えば、私が受験生だった1990年代前半は「とりあえず、有名大学の法学部や経済学部にいけば“つぶしが利く”」ということをよく聞いたのですが。
小林:いまや「つぶしが利かない法学部、経済学部」という時代ですよね。そのあたりは高校生も混乱しつつも努力していて。例えば、3エリア共通で「国際関係・国際文化」「医療・保健・衛生」の分野は伸びていますね。
オープンキャンパスに出かけて大学を見に行こう
常見:では、高校生はこれからどうやって大学を選べばいいと思いますか。
小林:自分の今の偏差値はこのぐらいだから、このぐらいの大学かなと受け身になるのではなく、もっと積極的になることが大事です。早いうちから、自分が何になりたいのか、目標を見つけておくべきでしょう。「なんとなく」で大学を選んでしまうと、入学後にミスマッチを感じて、退学になるケースもかなりあります。正解が見えない不安定な時代だからこそ、他人から与えられるのではなく、自分に合った大学を探してほしいと思います。
常見:そうですね。ちなみに具体的な方法としては、どんなものがありますか。
小林:個人的には、現役の大学生とコミュニケーションをとることをおすすめしています。例えば、最近はどの大学もオープンキャンパスを実施していますよね。自分で実際に大学に行って、そこの現役の生徒が「なぜその大学を選んだのか」、「入学して何を学んだのか」といった、疑問に思ったことを解消するといいでしょう。
常見:オープンキャンパスは大学の雰囲気もわかりますし、先輩から直接、大学生活の実態や入試のコツまでアドバイスをもらえますからね。模試の結果や偏差値だけで選んでしまうと、あとで痛い目に遭いそうですよね。
小林:そうですね。大学の規模によっても、魅力やメリット、デメリットも違います。だから、自分がどっちに合っているのかを見極めるために、実際にその大学や生徒の雰囲気を知るのはいいと思います。
常見:個人的には、自分が興味を持った大学の、実際の講義に潜るのもいいと思いました。そうすると教授の授業の内容や、学生たちの反応も直に見られますからね
小林:自分が判断できる材料が多ければ多いほど、いい大学選びができると思います。そうすることで、ぜひ自分が4年後に「ここを選んでよかった」と思える大学を見つけてくれるとうれしいですね。
常見:ありがとうございました!
4月から大学の教員になったわけだが、毎日が新しい発見でワクワクしている。と、意識高い系みたいなことを言ってしまったが、読者の皆さんにぜひ言いたいのは、「今の大学と学生を直視して欲しい」ということだ。
大学も大学生も常に変化している。今、20代の読者も、ぜひ母校を直視して欲しい。きっと数年前とは違う姿がそこにはある。1980年代のドラマのような、恋愛中毒のような牧歌的なものではなくなっている。そして、Fランク大学(学術論文では、最近ではマージナル大学という言い方もある)と揶揄される大学も、実は入学してからしごかれる環境になっていたりする。大学の現実を見て欲しいのだ。
今回の話をお伺いし、中長期的なブランド作りが大事だと思った次第だ。そして、高校生は意外によく見ているな、とも。大学改革に関するニュースが日々伝えられる今日このごろだが、だからこそまずは現実を見てみよう。
後に大学選びについて。ヤンキー漫画『WORST』(高橋ヒロシ 秋田書店)の名セリフに「ここは最低だけど最高だわ!」というものがある。黒い烏の巣と言われた、ド底辺高校のことについて、生徒が叫ぶのだった。最後は「自分にとって最高」かどうかが大事だと思う。
そして、その大学を出てよかったかどうかが分かるのは、卒業してからだ。また、この記事を読んでいる皆さんの活躍こそが大学の価値だと思う。私は一橋大学に入学した際に「真面目な奴ばかりだな」「東大くずればかりじゃないか」と失望した瞬間がある。でもその時に、OB・OGの名前に石原慎太郎、田中康夫を見て「よかった、変な大人がいてくれて」と安心したものだ。私が必ず出身大学を明記するのは、別に学歴自慢ではなく、後輩を応援するためだ。「ああ、こんなバカもいて、よかったな、オレも頑張ろう、と」
実は母校が存続するためにも、選ばれる大学になるためにも努力するべきなのは、OB・OGの私たちなのかもしれない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら