政府が進める「社会保障と税の一体改革」の議論の中で、年金支給開始年齢を68~70歳に引き上げる案が提示された。2013年4月から始まる65歳への段階的引き上げを控えての提示だったこともあり、大きな波紋を呼んだ。
企業は、すでに定年廃止や継続雇用制度など高齢者の安定雇用確保のための措置を導入することが義務づけられており、厚生労働省の今年6月時点の調査では、何らかの措置を実施している企業の割合は95.7%に達している(対象は常時雇用者31人以上の企業13万8429社)。
雇用確保措置として継続雇用制度を実施している企業は8割強、年齢上限を65歳以上とする企業が9割強と大半を占めるが、それでも「希望者全員が65歳まで働ける」企業は47.9%と半数に達していない。特に、従業員301人以上の企業では23.8%にとどまっている。
さらに提示案のように年金の支給開始年齢が繰り上がるとなれば、65歳から受給開始までの収入確保が大きな課題となる。その対策としては高齢者の雇用促進が最有力だが、逆に、現在も就職難に苦しむ若年層雇用へのさらなる影響は避けられない。
同調査では、「70歳まで働ける企業」が17.6%あるとの結果が示されている。年金支給開始年齢の議論が始まろうとする現時点において、この比率が多いと見るか、少ないと見るかは判断が分かれるところだ。
(加藤千明 =週刊東洋経済2011年11月5日号)
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