「雑談のない職場」が致命的にダメである納得理由 環境を変えるだけでイノベーションが生まれる

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一例として近代原子論がよく知られる。会計というおよそ化学に縁のない分野に携わっていたアントワーヌ・ラボアジエが、化学界の誰も気づかなかったある事実に気づいた。

当時の燃焼理論〔訳注 フロギストン説を指す〕では反応の前後で帳尻が合わないのだ。何かが足りなかった。それに気づいたことが酸素の発見へとつながり、のちに近代原子論につながった。

幸運な出会いが生じる環境をつくる

飛躍的なアイデアにつながる会話を誰かに無理強いすることはできない。それは自然に生じるものだ。ただし、そのような会話が生じるように工夫することはできる。

つまりリーダーは、自社の「クリック」が「ワトソン」〔訳注 クリックとワトソンはDNAの分子構造の共同発見者〕を探し当てられる空間を提供し、2人で彼らのDNAモデルを発見できるように仕向けるべきなのだ。

博学者にして画家のレオナルド・ダ・ヴィンチにかんする世界的権威のマーティン・ケンプ教授は、次のように述べた。「知識を別々のサイロに貯蔵したら、その知識によって成せることには限りがある」。

イアン・ゴールディンとクリス・クターナが著書『新たなルネサンス時代をどう生きるか――開花する天才と増大する危険』で同様の指摘をしている。

「天才になるには、自分がどのような環境を選ぶかがますます大切になる。理由は2つある。技巧と集中である」。

どのような空間を選ぶかによって、未来をつくるために必要となる人に出会えるかどうかが決まるのだ。

(翻訳:鍛原多惠子)

トレイシー・カミレッリ オックスフォード大学研究員

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Tracey Camilleri

オックスフォード大学サイード・ビジネススクールのアソシエイト・フェローであり、オックスフォード・ストラテジック・リーダーシップ・プログラム(OSLP)のディレクターでもあった。サマンサ・ロッキーとともにトンプソン・ハリソンを創業した。キャリアの初期にはコンサルタントや銀行員、教師や起業家などさまざまな仕事に携わった。

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サマンサ・ロッキー オックスフォード大学研究員

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Samantha Rockey

オックスフォード大学サイード・ビジネススクール・オープンプログラムのアソシエイト・フェロー。FTSEトップ10企業でABインベブに買収されたSABミラーでは、リーダーシップ開発部門のグローバル・ヘッドを務めていた。

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ロビン・ダンバー オックスフォード大学名誉教授

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Robin Dunbar

オックスフォード大学の進化心理学が専門の名誉教授。マグダレン・カレッジの名誉フェローであり、ブリティッシュ・アカデミーのフェローに選出された。社会脳仮説や言葉の進化のゴシップ理論、ダンバー数(管理できる人間関係の上限は150人である)でもっともよく知られている。著書に『友達の数は何人?:ダンバー数とつながりの進化心理学』(藤井留美訳、インターシフト、2011年)、『人類進化の謎を解き明かす』(鍛原多惠子訳、インターシフト、2016年)、『ことばの起源:猿の毛づくろい、人のゴシップ』(松浦俊輔/服部清美訳、青土社、2016年[新装版])、『なぜ私たちは友だちをつくるのか:進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係』(吉嶺英美訳、青土社、2021年)、『宗教の起源:私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』(長谷川眞理子解説、小田哲訳、白揚社、2023年)がある。

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