「2ナノ半導体」量産挑むラピダスの地政学的優位 日の丸半導体、「いまさら無理」でもない理由
日本の半導体は40ナノ止まり
半導体のテクノロジー・ノードは、10年前(2014〜2016年)には16/14ナノだったが、10ナノ、7ナノ、5ナノと微細化し、直近では3ナノになっている。3ナノを量産できているのは世界でTSMCしかない。
一方、日本の半導体で量産化に成功したのは40ナノ止まりである。ラピダスは、それを一気に超えて2ナノをめざすというのだから、批判派の矛先が集中したのも無理はない。
「いきなり2ナノを製造するなんて無理筋でしかない。段階を踏んで進めていくべきだ」
そんな声が、多くの元半導体技術者から上がった。
しかし、そもそもラピダスは次のような話から始まったのである。
2019年のこと、東京エレクトロンの社長を務めた東哲郎氏のもとに、IBM最高技術責任者のジョン・ケリー氏から1本の連絡が入る。
「テリー(註:東氏の愛称)。2ナノメートル世代の技術を提供したいんだが」
IBMはかつて、シェアこそ高くなかったものの、半導体を製造していた。ただ、同社のビジネスモデル転換とともに、2015年には半導体の製造機能をグローバルファウンドリーズに売却し、ファブレスに転じていた。
ところが、グローバルファウンドリーズはプレーナー構造からFinFET構造への転換に失敗し、微細化をやめてしまった。IBMはこれを不服とし、訴訟沙汰にまで発展した。
途中からIBMは、このまま裁判で争っても、グローバルファウンドリーズがファウンドリーとして世界の第一線に復帰する可能性は低いと考えたのだろう。しかも、IBM社内では、2ナノ半導体の開発に成功したところだった。そこで、新たなファウンドリー探しを始めた。
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