「2ナノ半導体」量産挑むラピダスの地政学的優位 日の丸半導体、「いまさら無理」でもない理由

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やや余談になるが、最も難易度が高い自動運転は、戦車だといわれている。道なき道を進み、何が飛び出してくるか予測ができない中で、向かってくるものを瞬時に認識し、場合によっては攻撃しなければならないからだ。

インドやアフリカを走る自動運転車が戦車並みの水準を備えなければならないわけではないが、少なくともセンサー式では頼りない。

さて、もう1つは画像認識による自動運転で、これはコンピュータが人間と同じように〝目〞で見て自己判断するイメージである。ただ、その裏で、すさまじい量の演算が必要になる。

自動運転が現在のレベル4(限定地域内の自動運転や高速道路での完全自動運転など、特定条件下における完全自動運転)であれば、センサー式自動運転でも問題ない。その場合、5ナノや3ナノの半導体で対応できる。

しかし今後、レベル5(つねにシステムがすべての運転タスクを実施する完全自動運転)に移行すると、センサー式から画像式に移行すると考えられる。半導体も確実に2ナノ以降が必要になる。

ラピダスが公言している2ナノの量産開始時期は、2027年である。その2027年には、自動運転の実用化が現実になるとされている。

さらにこのころになると、EVの電池の半分以上は、電気系統や自動運転機能が食ってしまい、モーターの駆動に回す余力がなくなってしまうのではないかと懸念されている。消費電力を削減する意味でも、2ナノ以降の半導体搭載は必須条件になってくる。

台風の目にくさびを打ち込める?

「2ナノの世界」では、量子コンピュータが稼働を始める。量子コンピュータは、古典コンピュータと呼ばれる従来型コンピュータに比べて「1億倍速い」ともいわれる。これほどの超高速計算を実現するには、最低でも2ナノの半導体が欠かせない。

たとえば近年、大型の台風やハリケーンによる被害が世界各地で起きている。研究者の間では、台風が膨張していくどこかのタイミングで、台風の目に何かを「打ち込む」ことで、大型化を食い止められるのではないかと考えられている。架空の台風をリアルタイムにシミュレーションするためには、古典コンピュータの演算ではとても間に合わない。

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