息の詰まる職場・職場の閉塞感はどこからやってくるのか?(第5回)--ゆとり世代の閉塞感
■過保護なマネジメント
若手社員を保守的にさせているもう一つの要因は、上司のマネジメントスタイルの変化である。新任管理職向けの教育・研修で強調されているのは、コンプライアンスや労働時間管理、メンタルヘルス対策など「問題が起こらないようにするマネジメント」である。また、部下の指導・育成に関しても、コーチングやメンタリングといった「部下の気持ちを慮るマネジメント」手法が教育されている。
どこの職場でも業務量は増えるが人は増えないという多忙な状況なので、上司はリスクをとりたがらない(ミスをしたくない/無駄なことはしたくない)部下を動かすために、役割分担や仕事の指示を明確にする「過保護なマネジメント」を強いられている。
労働時間管理が厳しい会社では、定時で部下の業務を終わらせるためにできる範囲の仕事しか与えられず、結局は上司が部下の仕事を引き取っているという話をよく耳にする。結果として、「とことんまで仕事をする」「自分一人で何とかする」という学習機会が多くの職場から失われているのではないかと懸念される。
■ゆとり世代を取り巻く労働・雇用環境
ゆとり世代が中堅社員となる今後10~15年後に、日本の労働・雇用環境はどのように変化しているのだろうか。企業の人員構成の変化としては、バブル期入社世代の高齢化で50代の人数が膨れ上がり、多くの企業が再びポスト不足や人件費増に苦しむことになるだろう。社会全体で見れば、社会保障給付費が右肩上がりで増加し、これに対応して年金受給開始年齢や雇用確保措置の上限年齢がさらに引き上げられる可能性がある。
そうなると、企業としてはシニアの雇用を確保するために、若年層の積極的な採用や昇給に原資を使いたいが使えないという状況が起こってくるだろう。シニアの雇用が進めば、管理職は自分よりはるかに年上の人を部下に持つケースが増えてくると予想される。シニア以外にも外国人や女性などの多様な人材活用が進めば、管理者には「細分化された業務のマネジメント」という高度なスキルが要求されるようになり、中間管理職へのしわ寄せはさらに大きくなるだろう。