井川一族が牛耳る 大王製紙の末路
意高前会長はこの7社全社で代表取締役を務めているばかりか、07年6月までは意高前会長の父親の井川高雄・大王製紙顧問(74)も代表取締役を一緒に務めており、親子で取り仕切っていた。意高前会長については、佐光正義社長が9月16日の記者会見で、「グループ会社すべてで辞任した」と述べていたが、実際に代表を辞任したのは大王製紙本体だけ(登記簿上は「退任」)。子会社7社は本人から辞任の申し出はあったものの、受理しておらず登記簿はいまだに代表取締役のまま残る。
九州電力の「やらせメール事件」で第三者委員会の委員長も務めた郷原信郎弁護士は、「社長がグループ子会社の取締役になることはあっても代表を兼務する例はあまりない。経営の独自性はなくなり、ガバナンスは期待できない」と指摘する。
こうした井川家による隅々までの企業統治体制を作り上げ、40代の意高前会長への政権交代を成し遂げたのが、大王製紙の創業者・井川伊勢吉の長男である高雄氏だ。
大王製紙と40年以上、取引関係のある関係者によれば、2代目社長の高雄氏は「200人が入社したら100人が辞めるという猛烈ぶり」で会社を牽引。家庭紙に参入し「エリエール」を業界トップブランドに育て上げるなど大王製紙を総合製紙メーカーのトップ3に押し上げた。
意高前会長の実弟の高博・大王製紙特命担当取締役(45)もまた、子会社5社で監査役を務め、09年6月まではエリエールテクセル社の代表取締役を務めていた。また、高雄氏の弟で意高前会長の叔父に当たる俊高氏(70)も大王製紙で副社長や会長を歴任。現在の肩書は「特別顧問」で、融資が実行された時期は、大宮製紙の取締役とダイオーペーパーコンバーティングの監査役も務めている。