成長する人は大体「不親切な本」に挑んでいる

「文字を追うのも苦痛」だから得られるもの

一回にほんの数ページ、あるいは数行でもいいんです。そうやってチャレンジして、少しでも限界を超えた感覚を得られれば、それが心の中で勇気の種になっていく。それを積み重ねておくと、人生の中で時折やってくる「きつい場面」を乗り切るとき、すごく力になってくれるんです。

そういう意味でも、本っていうのはすごいポテンシャルを持っていると思います。単に「情報が詰まった箱」ではない。本を、単に「情報を得る手段」だと本気で思っている人がいたら、その人はきっと、いくら本を読んでも成長することができない人だと思います。

「人を成長させる読書体験」というのは、自分の理解を超えた内容を前に立ちすくみ、ページをめくっていくことすらできないような混乱状態にたたき落とされた、まさにその瞬間にあるわけですからね。

最近、僕のカバンにはだいたい1、2冊は空海の本が入っています。空海の本は、僕にとっては途方もなく難解です。自分の意識レベルを通常よりも何段階も上げていかないと、文字を追うことすら苦痛です。

そういう意味では、僕の読解力や理解力の限界をはるかに超えた本なんです。まったく身の丈にあっていない。でも、そんな難しい本でも、1時間ぐらい集中して読んでいると一瞬、「あ、いま読めた!」と思える瞬間がやってくる。

「親切な本」には気をつけよう

別の言い方をすれば、「限界を超える本」というのは、読み手に、心と身体をいつも以上に整えておくことを要求する、ということかもしれないですね。ある種、「読み手のコンディション」を要求するような本を読むことが、その人を成長させる読書になるんじゃないかと思います。

最近の本は、書き手もわかりやすく書くし、編集やレイアウトもレベルが上がっているので、とにかく読みやすいですよね。そういういわば「親切」な本は便利なものですが、一方で、そういう親切な本を読んでいるだけでは、読書によって得られる効用というのは、大袈裟じゃなく、半減してしまうんじゃないですかね。

一度読んでも、ほとんどまともに内容が入って来ない本。その本を読むために、1時間ぐらいウォーミングアップして心身の状態を整えなければならないような「不親切な本」。そういう本を、ぜひ見つけてみてください。

そういう「不親切な本」に1日1回、それこそ「1行」でもいいからチャレンジしてみてください。「本が要求する心身の状態」というのがわかってくると、そうやって「読もうとすること」「チャレンジすること」によって、勝手に心がすっと落ち着いてきます。

読書というのは、そうやってある意味「背伸び」することによって初めて人を成長せしめるんですね。情報を取り入れるだけの読書(それはそれで、もちろん意味がないわけではありません)ばかりを積み上げて「年に●●冊読んでいます!」といっても、それによって人が成長する、ということはありえないのです。

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