自殺や殺人事件の現場になった部屋でも、住人が孤独死を遂げた部屋でも、奇妙な現象が起きる部屋でも、イーブイができるのは、あくまで片付ける(特殊清掃も含む)ことのみである。だが、そんな部屋たちをまた別の誰かが住めるように前に進めようとする人もいる。
事故物件には“希望”がある
真言宗僧侶の縫谷俊戒氏は、「釜鳴(かまなり)」という神事で孤独死のお祓いおよび物件の心理的瑕疵を解消する活動を行っている(※国土交通省が定めたガイドラインによると孤独死は心理的瑕疵に該当しない)。
同じく事故物件のお祓いをしている僧侶はほかにもいるが、縫谷氏が行っている釜鳴という手法は特徴的だ。
「一説では、釜鳴の発祥は3世紀後半以降、日本に存在したとされるヤマト王権にまでさかのぼります。
釜に米と水を入れてコンロで火にかけ、蓋を開けると“ボー”という音が鳴るのですが、これが通常の状態です。
音が鳴っている釜を持ちながら家の中を歩くと、不思議と音が鳴りやむ場所があります。そこが、“気”が滞っている場所。気の流れが止まると悪い状況が発生しやすく、逆に気の流れを良くすれば良い状況が発生しやすくなります。
なので、音が止まった場所で真言を唱え、再び音が鳴るようにしてあげるのです」(縫谷氏)
本連載で取り上げているゴミ屋敷やモノ屋敷には、住人が長らく立ち入っていないような部屋もある。ゴミやモノで埋め尽くされているのでしばらく窓も開けていない。やはり、そういった部屋は気の悪さを感じ、住人も怖くて立ち入らなくなっているケースさえある。
縫谷氏が求めているのはお祓いの「わかりやすさ」である。気を視覚で確認することができれば、次の住人の心理的負担も減るのではないか。次の住人に事実を伏せるのではなく、事実を伝えたうえで住んでもらう。そうすることで、事故物件はひとつずつ前に進んでいく。
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