東大→ミネルバ大→サッカー選手を目指す生き様 今はアルゼンチンでプロになることに全集中

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日本人が経営に関わる「無双ArgentinaC.F.」と接触し、チームを紹介された。改めて言うまでもなく、日本でプロになれなかった煙山さんが世界的なサッカー強豪国であるアルゼンチンでプロを目指すハードルは高い。今は自分より年齢が若いプロ予備軍の選手に混じって3軍で汗を流している。

「毎日、『チ―ノ』(スペイン語で中国人)と言われ、チームに適応するため苦悩しつつも、サッカーに打ち込んでいます(笑)。たぶん、今が最も人生で挑戦できているとも感じており、凄く充実していますね。

アルゼンチンは日本とサッカー文化も違い、とにかく『ゴールに直結する選択をすること』が求められます。それを理解できてから、自分のプレーも変わってきているとも感じています。年齢や身長はもう変えられませんが、決定力、フィジカル、テクニック、戦術理解といった変数の部分を努力で伸ばせたらアルゼンチンでも通用します。サッカーでプロを目指すのは年齢的にも体力的にも今しかできません。だから挑戦する価値があると思います」

今はアルゼンチンでプロになることに集中しているといい、その手応えも感じ始めているという。エネルギーのほぼ全てをサッカーに捧げる生活を続けており、プロへの道順を論理的に話す様子も決して大袈裟に聞こえない。さらに、プロサッカー選手以外にもいくつか夢は持っている。

サッカーで完全燃焼した後は起業したい

「たぶん日本に戻り会社で働いて、ということはないと思います。東大に残っていい成績をとっていい会社に就職して、という未来のほうが具体的だと思う人もいるかもしれませんが、私は『好きなことをして生きる』ということをシンプルに突き詰めたい。

そのためにはやらなければいけないこともたくさんあるし、時間もない。サッカーで完全燃焼したら、起業を目指していくことになると思います。地政学的な視点で、世界中の地域で課題解決を目的とするような事業を展開していきたい。もちろん数字や業績も大切なので、その点も追い求めていきたいです」

世界中を旅するなかで会社も成功させる。個人で目指すには決して簡単な道ではないが、だからこそやりがいもある。そのうえで、もう1つ大きな目標があるとも続けた。

「ミネルバに来て気づいたのは、民主主義が機能していない国もたくさんあるということです。みんな自分の国の政治に強い危機感を持ち、意見をしっかり述べられる。でも、日本ではそういう文化は浸透しておらず、むしろ嫌う傾向がある。それは、これからの時代は、ナンセンスになると思います。自国の政治のことをしっかり説明できないことは、凄く恥ずかしいことなんだ、と気づきました。

将来的にはビジネスでお金を作って、仲間を集めて政治の世界にも挑戦したい。そういう意欲ある人たちが集まる集団や環境を作ることも大きな目標です。一度きりの人生なので」

世間の常識から見ると、その選択は回り道かつ、理解しがたいと言われるかもしれない。だが、本人にとっては一本筋が通ったもの。煙山さんの長い旅はまだ始まったばかりだ。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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