サービスというのは、100引く1が99ではない。100引く1がゼロになる。それだけ、気が抜けないものなんです。しかし、それぞれの担当者がきちんとサービスに務めれば、お客様はついてきてくださる。そして、お客様がお客様を連れてきてくださるのです。
そして、サービスをするうえで大事なのは目配りです。気配りしようといっても、目配りがなかったらできないでしょう。
たとえば、レストランのウエーターは、自分の担当テーブルが決まっています。そこには十分目配りができている。でも、通りすがりに担当外のテーブルを見て何か気づいたとします。担当者にすぐ伝えるとか、自分で直すとか。瞬時にそういったことができないといけません。
「どうしましょうか」と聞いてくるのはダメ
人は十人十色。それが、ホテル事業の難しさでもあり面白さでしょうね。いいホテルの定義一つを取っても、泊まる人によって異なります。値段もそうですし、1泊なのか4、5泊なのか。食べ物の好みにしてもそうでしょう。僕は社長時代、帝国ホテルの基準、味というのを壊すなと言っていました。料理人が変わるたびに味が変わってしまうのでは、レストランが困りますから。
経営について、父親(帝国ホテル元社長の犬丸徹三氏)からああしろ、こうしろと言われたことはありませんが、子供の頃は「自分のことは自分でしろ」とずいぶんしつけられました。ナイフ、フォークの使い方や、食べながら話しちゃいけないといった作法も教えられましたが、これは厳しいというものではなく、当たり前のことです。僕は身の回りのことは全部自分で整理しています。他人に背広やネクタイ買ってもらってどうするんだと思うんですよ。
経営者としては、僕はよく「私はこうしたい。どうですか」と聞いてくるのはいいけれど、ただ案を並べて「どうしましょうか」と聞いてくるのはダメだと言ってました。料理でも何でも、その人の主張というか意志がまずなければ。「今はこうだから、こうしたらこうなる。だからやらせてほしい」と説明されれば「やってごらん」となるのです。
今、政治家からビジネスパーソンまでその発言を聞いていると、「やってみたいと思います」「お詫びしたいと思います」「頑張りたいと思います」と、皆「思います」ばかり。なぜ「します」「やります」と言わないのか。それが今の日本を象徴している。「思っている」だけじゃなく、「私だったらこうします」とはっきり言わなければいけません。
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