「日本の仏教」と「釈迦本来の教え」の決定的な違い 日本では「大乗仏教」に形を変えて広まった

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古舘:真理は1つではない、人それぞれ違うということですね。

何を選んでも自由

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佐々木:その人が選び取った真理を、「間違いだから捨てなさい、こちらを真理として選びなさい」とは言えません。宗教は科学ではありませんから、それぞれが何を選んだとしても自由です。私たちが釈迦の教えを素晴らしいと言っても、普遍性のある主張ではない。それぞれの領域のものを選び取って、これこそ釈迦が一番言いたかったこと、釈迦の本意はこれだったと個人的に解釈するわけですから。

古舘:だから大乗仏教の世界では、釈迦の教えをさまざまな形に変えた教義が生まれてくるのですね。

佐々木:その変遷が大乗仏教の多様性を生むわけです。もし大乗仏教が釈迦の教えを曲解しただけの底の浅いものだったら、これほど長きにわたって信仰されていないでしょう。とっくの昔に途絶えてしまっているはずです。

古舘:現在に至るまで日本で信仰されてきたのには、それなりの理由や意味があったわけだ。

佐々木:たとえ釈迦の教えとは教義が違っていたとしても、その多様な世界を知ることによって大乗仏教の存在価値が見えてくるでしょう。

古舘:なるほど。ただ、科学がここまで信仰されるなか、私のように信仰はほしいけどあの世や神、仏といった超越存在を信じ切ることは難しく、「信仰難民」と化している人間には、実践できずとも、釈迦仏教の真理は沁みるのです。

古舘 伊知郎 フリーアナウンサー

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ふるたち いちろう / Ichiro Furutachi

立教大学を卒業後、1977(昭和52)年、テレビ朝日にアナウンサーとして入社。「古舘節」と形容されたプロレス実況は絶大な人気を誇り、フリーとなった後、F1などでもムーブメントを巻き起こし「実況=古舘」のイメージを確立する。一方、3年連続で「NHK紅白歌合戦」の司会を務めるなど、司会者としても異彩を放ち、NHK+民放全局でレギュラー番組の看板を担った。その後、テレビ朝日「報道ステーション」で12年間キャスターを務め、現在、再び自由なしゃべり手となる。2019年4月、立教大学経済学部客員教授に就任。

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佐々木 閑 花園大学特別教授

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ささき しずか / Shizuka Sasaki

花園大学特別教授。1956年、福井県生まれ。京都大学工学部工業化学科卒。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。文学博士。専門は仏教哲学、古代インド仏教学。花園大学教授などを歴任。著書に『NHK「100分de名著」ブックス ブッダ 真理のことば』『大乗仏教』『宗教の本性』(いずれもNHK出版)など。

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