全員が一定の成果を出せるキーエンスの仕組み 成果のバラつきを防ぎ、全体の生産性を高める

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

2つ目は、全体のレベルアップが図れるという点です。トッププレーヤーではないメンバーの能力を引き上げることで、組織全体の底上げにつながります。たとえば新卒が年間1000万円の売上を出せるレベルだったとして、それを教育や仕組み化によって3000万円まで引き上げられたとします。

1人あたり2000万円の差が生まれるわけです。5人いれば、トッププレーヤー1人分の売上増と同等の効果が得られることになります。このように、メンバー一人ひとりの能力を少しずつ高めていくことは、組織のパフォーマンス向上に大きな影響を与えます。

トッププレーヤーを増やすことももちろん重要ですが、それよりも多くのメンバーを一定のレベルまで引き上げることを優先すべきだと私は考えています。さらに、バラつきが小さくなれば、人員計画も立てやすくなります。1人採用したら年間でこれくらいの売上増が見込める、といった具合に数値化できるようになるのです。

このように、バラつきをなくすことは、属人化リスクを下げつつ組織全体のレベルアップを図り、予測可能な成長を実現するための有効な手段だと言えます。キーエンスが長年高い業績を維持し続けているのも、この考え方を徹底している結果だと私は理解しています。

一見地味に見える取り組みかもしれませんが、ビジネスの世界で勝ち続けるための秘訣は、こうした基本をおろそかにしないことにあります。

「全員が“一定の成果”を出せる」のが理想的な組織

組織が1人のトッププレーヤーの能力に依存するのではなく、全員が一定の成果を出せる体制を整えることが重要だとわかりました。その理由の1つ目は、リスク管理の観点からでした。1人のトッププレーヤーに依存していると、その人が退職や病気などで突然いなくなった場合、組織の業績が大きく落ち込むリスクがあります。一方、全員が一定の成果を出せる体制であれば、そのようなリスクを軽減できます。

2つ目の理由は、組織の業績の最大化の観点からです。同じ4人のチームでも、1人のトッププレーヤーが7000万円、残りの3人が1000万円ずつ稼いでチームとしては合計1億円稼いでいるチームよりも、トッププレーヤーはいなくても4人全員が3000万円ずつ稼いでいるチームのほうがチームの合計では1億2000万円と2000万円多く稼げます。

このチームが1人ずつ4000万円稼げるようになれば、トッププレーヤーがいなくても1億6000万円稼げるようになります。しかも稼ぎ方の仕組み化がされていれば、メンバーが1人加わるだけでもすぐに他の人と同じように4000万円稼げるようになり、チームとしては2億円稼げるようになるのです。つまりトッププレーヤーがいるチームの2倍も稼げるようになるのですね。

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事