同志社大学・太田肇教授の新モチベーション論(第7回)--「大失敗賞」が社内風土を変える
人はだれでも相手の欠点が気になる。経営者は社員の、上司は部下の欠点を指摘し、直させようとする。けれどもなかなか効果はあがらない。欠点を指摘されても素直に聞き入れられないものだし、少なくとも「直そう」という自発的な意欲はわきにくい。
だとしたら、思いきって発想を逆転してみてはどうか。よいところをほめ、自信と誇りを持たせていくなかで、欠点も自ら直させるのである。
「ほめ達」をキャッチフレーズに掲げる覆面調査会社、C’s(シーズ)社長の西村貴好氏は、つぎのような経験談を語る。
2005年の創業当初は、経営者の依頼を受けて店の改善点を見つけ、報告する、「ダメ出し」の覆面調査をしていた。ところが店の悪いところを証拠付きでつぎつぎに並べたてていくと、経営者の顔は青ざめ、現場の責任者は顔を上げずに歯を食いしばっていた。にもかかわらず、報告を受けたほとんどの会社では、改善は進まなかった。
そこで2007年に、ほめるところ探し専門の調査会社に変更し、ほめて認める、そして可能性を伝える報告書を作成するようにした。改善点は、すぐに改善可能でしかもお客さんにとってポイントが高い点、一つか二つに絞って伝えるようにしている。すると、すぐに改善行動に移るようになり、以前よりもはるかに効果があがったそうである。
ミスへの対応にも、同じようなことがいえる。社員が仕事でミスをしたとき、厳しく叱責したり厳罰を科したりすると、社員は萎縮し、リスクをともなう仕事はしなくなる。また、ミスを隠そうとし、それがさらなるミスや事故を生むといった悪循環が生じる。
それを防ぐのにも表彰が使える。大阪府堺市に機械部品メーカーの太陽パーツ(城岡陽志社長)という会社がある。この会社では、「大失敗賞」というユニークな賞を取り入れている。目的の一つは、失敗を恐れず、前向きな挑戦を促すこと。そしてもう一つの目的は、失敗情報を全社員が共有し、ミスを減らしていくことにある。