日本のアパレルを捨て、直営化する欧米ブランド
ブランド側にもメリットがあった。衣料品は地域ごとに体型や季節感、嗜好が異なり、世界共通の製品を展開するのが困難とされる。日本でビジネスを始める際、アパレルにライセンスを付与することで、在庫を抱えずにブランドの浸透と市場の拡大を図ることができたのだ。
ところが、一定のブランド力が確立すると、そのメリットは薄れる。多くの場合、契約更新の判断は商標権を持つブランド側に委ねられ、「ブランド側は失敗してもリスクはない。アパレル側が成功すれば販売権を剥奪される裏切りのビジネス」(ドイツ証券の風早隆弘シニアアナリスト)だ。
今後、ライセンス契約の打ち切りはさらに増えるだろう。インターネットなどの普及で「流行が世界ほぼ同時に発生、サイズ感を除けば、ローカライズする必要性が薄れてきている」(風早氏)。コピーブランドが横行する中、商品を自社で直接コントロールしたいという、ブランド側の思惑も高まっている。
カネかかる商標権取得 運営に失敗する企業も
こうした流れを受け、大手アパレルは商標権の取得に舵を切っている。これは実質的なブランドの買収で、ブランド側の意向にかかわらず、自由にブランドを使える。
サンエー・インターナショナルはライセンス契約していた「ジルスチュアート」のアジア商標権を07年に買収。伊藤忠商事も06年に子会社ジョイックスコーポレーションでライセンス展開する「ポール・スミス」の発行済み株式の約40%を取得した。オンワードホールディングスも、「ジョセフ」や「ジル・サンダー」などの獲得を積極化している。
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