“常識破り”が生んだ富士ゼロックスの新兵器

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「(大企業偏重の)今までと同じ取り組みでは、やがて収益が減っていく」と、山本社長は危機感をあらわにする。そこで、新市場に乗り込むために、2年近くの歳月をかけてハードとソフトの両面で“新兵器”を開発した。

「こんなのできるわけない」。富士ゼロックス商品開発本部の山本隆一マネジャーは今から1年半前、社内で猛反発を受けていた。

中小企業深耕のための戦略製品として、「世界最小・最軽量」の廉価版A4型プリンタの開発を目指していた。だが、従来製品のバージョンアップでは、何度トライしても他社をしのぐ小型化ができない。頭を抱えた山本氏を中心とする開発チームは、過去製品を踏襲するのではなく、ゼロベースで企画を練り直した。

浮かんだのは、消耗品の機能を大幅に省略する構造だ。トナーや感光体(レーザーやLEDなどの光源によって電気的に画像を作り出す部分)、現像器(感光体にトナーを付着させる部分)といった部品は、プリンタの使用頻度が増えるにつれ劣化する。そのため、そういった消耗品は、本体機器から取り外して交換することができるユニット式にするのが業界の常識だった。

データを駆使して説得 中国市場で巻き返しへ

これに対し、開発チームは感光体と現像器を本体機器に一体化、つまり交換不要にする構造を提案した。感光体や現像器の耐久性向上に努めるが、基本的にはそれらが劣化した時点で製品寿命も尽きる、いわば「使い捨てプリンタ」だ。そうすることで補助機能など複数部品を省くことができ、製品の小型化につながる。

とはいえ、採算のよい消耗品を交換することで果実を得てきた業界では、この仕組みは“常識外”。まず、販売現場がかみついた。「アフターサービスでの収益を確保できない」。経営陣も難色を示した。「感光体ユニットが故障した際は、どのように対応するのだ」。開発現場でも、前例のない構造を受け入れようとしないスタッフが少なくなかった。

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