“常識破り”が生んだ富士ゼロックスの新兵器
ただ、現地では低単価のA4型複合機が市場の8割を占める。富士ゼロックスは収益性を重視してA3型を中心に展開してきたため、10年の台数ベースでのシェアは8・1%にすぎない(1ページ中図)。
「巨大なポテンシャルのあるローエンド(低価格帯)市場を取っていくことが、今後の成長には不可欠」と、中国事業を統括する徐正剛常務執行役員は強調する。低価格帯市場を狙って投入した新プリンタは、消耗品交換によるアフターサービス収入が期待できない。が、この廉価版製品をきっかけに中小企業に食い込むことで、顧客層を広げ、徐々に中価格帯から高価格帯の製品を拡販していく戦略である。
「シェアトップ必達の指示を山本社長から受けている」と、徐常務執行役員は明かす。まずは13年までにシェア15%を獲得し、トップグループ入りを目指す。そして、現地売上高を10年度600億円から早期に1000億円に引き上げる算段だ。
営業担当者を介さない無償ソフトを提供
中小企業を掘り起こすためのソフト面での武器としては、クラウドコンピューティングの仕組みを活用する新サービスを準備した。
名称は「SkyDesk」。オフィス業務に必要なプレゼンテーション資料作成や、名刺管理、顧客情報管理ソフトなどをネット経由で無償提供する。主な対象は、富士ゼロックスが最も手薄だった社員30人以下の零細企業。早い段階から顧客を囲い込み、将来の
有料サービスや事務機販売につなげる狙いである。
SkyDeskを一言で表現すると「ビジネス向けフェイスブック」。“本家”フェイスブックのように、チャット感覚で社内外の仲間と情報を交換・共有化することができる。利用者は1人当たり1ギガバイトの容量まで使用することが可能だ。