“常識破り”が生んだ富士ゼロックスの新兵器

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この新サービスには当初、身内が戸惑った。SkyDeskを公表した8月23日。その運営を担う「新規事業準備室」の電話が鳴りやまなかった。「どうやって売るんだ」。顧客ではなく、新サービスの戦略を知らない富士ゼロックスの営業担当者から問い合わせが殺到したのだ。

SkyDeskは従来のビジネスモデルとは一線を画す。通常のITサービスはシステムエンジニアや営業担当者が顧客企業を訪問して、そこでハードやソフトを設置し商品説明を行う。一方、SkyDeskは顧客がネット上で操作し、自己完結する。操作説明などもメールでの対応となる。国内34販社、約6000人の営業担当者を基盤とする直販網が富士ゼロックスの強みとされてきたが、今回は“あえて”そのルートを経由しない。ネット広告で認知度を上げ、ネットで商売を完結する戦略を試みている、というわけだ。

「毎日100件以上の登録者がいる。想定以上に反応がよい」と、新規事業準備室の小栗伸重マネジャー。今後1~2年で100万ユーザー獲得を目指す。当面は国内のみだが、海外展開も視野に入れる。

陣地を広げるための布石を打った富士ゼロックス。ただ、安穏とはできない。中国ではシェア上位の韓国サムスン電子が、低価格機種で攻勢を強める。日本ではリコーが待ち受ける。中小企業向けITサービスで根を張るだけでなく、富士ゼロックスが得意とする大企業向けサービスでも真っ向勝負を挑んできている。

ライバルとの競争を制し、新市場を開拓することができるか。戦いの火ぶたは切って落とされた。

(梅咲恵司 =週刊東洋経済2011年10月1日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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