たまたま借主は私の友人で、引越し当日に「洗濯機が入らない」と電話がかかってきたのです。洗濯機スペースの前に扉があるのですが、それがどうしても外れず、洗濯機を入れることができないということでした。
内見で洗濯機置き場も確認したのですが、「これなら入るだろう」と安易に判断してしまったこと、さらに扉が外せない特殊なものがあることを知らなかったこと。そして、入居前の最終確認で採寸をしなかったという、小さなミスが重なり、「洗濯機が入らない」という大きなトラブルになってしまいました。
もちろん、部屋の細かい採寸は不動産仲介業者の義務ではありません。
しかし、私にとっては「入居後のアフターフォローはすべてこちらの責任」が鉄則です。
洗濯機が搬入できないなら、責任を取って対処します。
その場で引越し業者にお願いし、搬入するはずだった洗濯機を引き取ってもらうよう交渉。友人には新しい洗濯機を購入してもらい、私に請求してもらうことで解決しました。
高い授業料となりましたが、いつものルーティンをうっかり省略したり、思い込みで判断したりする怖さを痛感できたよい機会だったと思っています。
お客さまをトラブルに巻き込まない
責任を取るために弁償までするというケースはほとんどないのですが、もうひとつ、忘れられない事例があります。それはお客さまとオーナーさまの深刻なトラブルでした。
床が無垢素材の店舗を借りるお手伝いをしました。物件そのものは新築ではなく、築数年経った店舗です。借主のお客さまはコロナ禍でお店を1カ月ほど閉めることになり、ようやく再開しようと店を訪れたところ、床が全体的にかなりゆがんでしまいました。
人の出入りが無かったので換気はしていない状態で、あとから調べても原因はわかりませんでした。床がそのような状態なので、営業もできず、私に連絡がきたのです。
私から管理会社さまに連絡したところ、オーナーさまから「今までそんなふうになったことはない。借主の責任だ」と主張。一方、借主のお客さまにしてみると「何もしていないのに、なぜこちらが修理代を払わなくてはいけないのか!」と怒ってしまいました。
お互いが譲らず、このままでは裁判になるというところまでこじれてしまいました。私が仲介した貸主と借主が裁判で揉めること自体も嫌でしたし、そんなことをしてもお金と時間のムダになるだけだとしか思えません。
このトラブルに対して、私が責任を取るとしたらどのような方法があるだろう。そう考えて提案したのが、「私が床の修理代をお支払いするので、裁判はやめましょう」ということでした。