マレーシア教育移住の「魅力」と「限界」

「国際自由人」の藤村正憲さんに聞く

ーーそのあと、マレーシアからほかの国に移住される選択をします。マレーシアの教育に限界を感じていたということでしょうか。

マレーシアの問題は、まだ若い国だということです。国が成熟しておらず、特に文化的、芸術的な部分が弱い。また、息子はサッカーが大好きで、アーセナルシンガポール・ジョホールバル校などのチームでプレーしましたが、同学年の中では足も速いしうまい。しかし、いくらこちら(マレーシア)で上手でも、本場のレベルとは違うなと感じていました。

そこで7歳からしばらくの自我が形成される過程では、文化面、スポーツ面を含めた全人的な教育を、教育に定評のある国でしてみようと思いました。また、そろそろ世界はアジア以外にもある、ということを教えたいと考えました。もっと広い世界を知ってほしい、ということですね。

芸術を楽しむ環境がなかった

ーーマルボロ・カレッジはイギリスから先生を招聘し、美術や音楽などの芸術面、スポーツ面に力を入れている学校として有名ですが、それでは足りなかったということでしょうか。

確かに学校での授業内容は充実していました。ただし、ジョホール・バルの街中の環境はそうではありません。人間は学校だけではなく、環境全体から受ける影響が大きいと思います。マレーシアで芸術を学ぶのは、日本で英語を学ぶのと似ています。いくら先生やメソッドがよくても、一歩学校の外では全員日本語。これでは英語は身に付きません。同様に、マレーシアの学校で芸術を学んでも、環境がまだ追いついてはいないと感じました。

ーー次の国はどのように選ばれたのでしょうか。

オーストラリア、ハワイ、米国、オランダを考えました。ただ、オーストラリアやハワイには、美術館など、私たちの求める施設が少なかった。そこでサッカーの教育にも定評があり、芸術も溢れているオランダが浮上しました。国際バカロレア機構アジア・パシフィック委員で、東京インターナショナルスクールの共同代表を務める坪谷・ニュウエル・郁子先生などの先生にも相談しましたが、彼らがオランダの学校教育を高く評価されていたのも決め手になり、2015年4月に下見に行きました。

長男が釘付けになり、その後、パンフレットを元に模写したというゴッホの自画像

ーー下見されていかがでしたか。

アムステルダムの国立美術館に行ったところ、息子はゴッホの自画像に何かを感じたのか、ホテルに戻ってから、1時間以上、模写に熱中していました。本物に触れることで、彼は触発されたのでしょう。また、美術品が日本よりも身近に展示されているのもよいと思いました。

サッカーの試合も見に行き、大変興奮していました。サッカー・スクールのレベルも高い。オランダは世界でいちばんサッカーの教育システムが整っている国と言われています。

ーーオランダの学校は日本ともマレーシアとも違うのですか。

オランダは国全体が教育に自信を持っていて、人材育成に力を入れています。また、マリファナを合法とするなど「自由の国」でもあります。公立学校でも校長先生の裁量が大きく、学校ごとに自由な方針がある。さらに私立学校を作るのも比較的容易で、いろいろなアプローチの多様な学校が存在する。オーソドックスなスタイルの学校があると思えば、「イエナプラン」といって、違う学年の子どもたちがひとつの教室で勉強し、子ども同士で教えあう学校もあります。学区制がなく、気に入った学校に通えるため、親と子はこの多種多様な学校の中から選択できるのです。

そしてオランダの教育では子どもの自主性を大事にしています。教育にしてもサッカーでも「コーチング」と呼ばれる手法が大切にされており、上から押し付けず、いつも「自分が何をしたいか」を考えて行動します。学力よりも人間教育に期待しています。

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