サイゼリヤ「優待廃止ショック」も国内復活の兆し 株主優待廃止で一段の成長が求められる局面に

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好調の背景にはオペレーションの改善もある。店舗スタッフの採用や教育を強化してきたことに加え、セルフレジやモバイルオーダーの導入店舗も広げ、回転率を底上げしてきた。

松谷社長は「営業時間の延長やDXは全店舗でできておらず、既存店の客数はまだ伸びる余地がある」と話す。

収益柱のアジアも好調を維持している。第3四半期累計の売上高は前年同期比30%増の580億円、営業利益は同66%増の82億円と増収増益となった。依然として営業利益の8割をアジアで稼ぐ。

中心となる中国は不動産不況の影響などで消費が低迷しているが、サイゼリヤは安価なイタリアンとしての地位を築いている。不況も追い風に集客力を維持しているようだ。国内と異なり、値上げも業績に貢献している。

今2024年8月期は、通期で国内の営業利益が20億円、アジアは100億円と計画している。足元の勢いを維持できれば、計画を超過達成する可能性もありそうだ。

優待廃止で個人投資家にショックも

好調な決算の一方で、サイゼリヤは同日、株主優待の廃止を発表した。これまでは100株以上保有で2000円分、500株以上で1万円分、1000株以上で2万円分の食事券を、継続保有する株主に送付していた。今2024年8月期末の株主優待から廃止となる。

これを受けて翌11日の株価は、前日終値の5750円から一時500円下落。優待の恩恵を受ける個人投資家などから嫌気された格好だ。

松谷社長は優待の廃止について「未出店地域の株主や海外投資家など、優待を利用する機会のない株主からの声が多かった。優待券の不正転売もあり、配当を上げて公平性を保つ」と説明した。配当による株主還元を強化する方針で、今期の年間配当予想を18円から25円へ引き上げている。

個人投資家に人気の株主優待を廃止する(記者撮影)

今後はDOE(株主資本配当率)を基準とした配当を検討する。単年度の業績で算出する配当性向による還元と比較して、継続的に利益を積み上げ、成長することが求められる。

成長に向けて、今後も投資を続けていく。中国は広州新工場の稼働を控えており、店舗数の拡大も進める。不況で他社店舗の撤退が相次ぎ、出店する土地や従業員は順調に確保できている状態だ。来期は新たな地域への出店も視野に入れるなど、攻勢をかける。

一方、国内は低い利益水準から抜け出したばかり。既存店は好調だが、食材費などのコストは高いままだ。収益構造の改善は今後も課題となる。また、2019年8月期の1093店を境に店舗数の減少が続く。国内も成長に向けて出店を強化する必要がありそうだ。

優待廃止のショックを乗り越え、株主に一段の成長を示すことができるか。松谷社長をはじめとする経営陣の手腕が試される。

金子 弘樹 東洋経済 記者

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かねこ ひろき / Hiroki Kaneko

横浜市出身で早稲田大学政治経済学部を卒業。2023年4月東洋経済新報社入社。現在は外食業界を担当。食品ロスや排出量取引など環境問題に関心。

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