日本一ケチャップを愛する街が持つ「一貫性」

歴史と統計に明確な答えがあった

その秘密を解く鍵は、現地で流通している全国的に見慣れないケチャップにあった。パッケージにはこう書かれている。「ハ・グ・ル・マ?」。調べてみると、和歌山県にひとつだけあるケチャップ工場が、ハグルマという企業のものらしい。さっそく和歌山県紀の川市にあるハグルマの工場を訪れてみた。

ハグルマが和歌山に工場を移転させたのは昭和47(1972)年。最新の設備を誇り、ロボットも導入。生産量は年間およそ5000トン。ただ大量のケチャップを作っているだけではない。日々、製品の向上を目指し、味はモチロン、ケチャップで大切な粘り気などを徹底して研究している。まさに地場産業として地域に根付いているワケだ。

実はトマトは水に弱く、雨が多い場所では育ちにくい。和歌山は年間を通じて晴れの日が多く、特に、山間部は水はけがよい。良質のトマトが取れる環境がそろっていたことが、ハグルマが和歌山に工場をつくった理由だ。

キーワードは「酸味」

和歌山市の梅干しの年間消費量は、2位以下を大きく引き離しダントツだ。

ただ、和歌山が日本一ケチャップを使う理由は、それだけではない。専門家に聞いてみると、和歌山ならではの食文化が関係していることがわかってきた。キーワードは「酸味」だ。

和歌山は、言わずと知れた紀州梅の産地。近畿農政局和歌山地域センターによれば、和歌山県内の梅の収穫量は全国の6割以上とぶっちぎりの日本一で、その座を50年連続で守っている。梅干し消費量を見てみると、和歌山市の2人以上世帯の年間平均は1970グラム(総務省統計局 家計調査・2012~2014年平均)。2位福島市の同1199グラムを圧倒的に引き離すダントツの1位で、全国平均760グラムの2.5倍も梅干しを食べる。

また、和歌山にはサバを酢でしめた「早なれ寿司」という郷土料理がある。海に囲まれている和歌山だが、昔は、多くの人々が山間部で暮らしていた。そこで、魚を日持ちさせるために、酢でしめる保存方法が発達。ご飯も、酸っぱいものを食べるようになったという。

サバを酢でしめた「早なれ寿司」

実は「酢」の消費量も和歌山市は全国一。2人以上世帯の年間平均で3317グラム(総務省統計局 家計調査 2012~2014年平均)と、全国平均の同2373グラムより4割以上も酢を使っている。

さらに極めつけは、和歌山を代表する名産品のみかんだ。和歌山市はみかん消費金額が日本一。2人以上世帯の年間平均は7179円(総務省統計局 家計調査・2012~2014年平均)。全国平均の同4497円よりも6割以上も使っている。

和歌山の食文化は「酸味」と密接な結びつきがあり、酸っぱいモノが好きという点は一貫している。それが、和歌山でケチャップが愛されるようになる風土と関係しているようだ。歴史と統計をしっかり調べると、その答えが明確に導き出された。

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