女性の方が「器用に噓をつける」脳科学的な根拠 とりあえず「かわいい」「ウケる」もその表れ

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「みんなに合わせる」ための重要な機能、特に非言語コミュニケーション、文脈の背景、場の空気を読むのに使われる脳の領域は、左の側頭葉の一部である上側頭溝というところです。これは、言語を司る左側の上側頭回という場所の直下にあたります。

女性の方が空気を読むのが得意な理由

言語野と近接した場所にあるというのがとても興味深いところで、男性と女性では性差があり、女性の方が統計的な有意差のあるレベルで発達しています。つまり、女性の方が空気を読み過ぎて、身動きがとれなくなりがち、とも考えられるわけです。

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これを現象として考えると、集団の空気を読むことの合理性を理解し、そのためなら嘘をつけるという器用さは、女性の方が比較的発達しているということになります。

ママ友たちの間では正直な意見を言いにくいとか、若い女性たちが、とりあえず同じ集団のなかでは、どんなことに対しても「かわいい!」とか「ウケる!」と肯定的に反応しておくことなどは、その表れかもしれないのです。反対に、若い世代では男性の方が集団の同調圧力から自由ということも言えるでしょう。

このように上側頭溝が発達しているがゆえの息苦しさもあるわけですが、多くの研究者たちの解釈によれば、女性が空気を読む能力を発達させた要因は、子育てにあるのではないかと考えられています。子育てを行う際、乳児からの非言語メッセージを受容するために、この能力が必要だったのではないかというのがその理由です。

言葉を発することのできない乳児は、顔色や泣き方などによって意思を伝えているため、それを高い理解度で受け取る必要があるわけです。

ただ、その能力の高さによって、同性同士のコミュニケーションや、自分自身に対するネガティブなメッセージを受容しやすくなるために、生きづらさを感じているとするなら、女性に降りかかってしまいがちな苦労だと言えるかもしれません。

中野 信子 脳科学者

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なかの のぶこ / Nobuko Nakano

医学博士、認知科学者。1975年、東京都生まれ。東京大学工学部卒業。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所にて、博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。現在、東日本国際大学教授。著書に『脳内麻薬』『ヒトは「いじめ」をやめられない』『サイコパス』などがある。テレビ番組のコメンテーターとしても活動中。

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