「多発する炎上」が社会を滅亡させる宿命的な筋道 人類の脳の発達が生み出した「正義中毒」の末路

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自分がバカだと思われることを恐れ、自分がターゲットにならないために、パッシブ(受動的)に他人を叩く行為に加担する(あるいはスルーして助けない)という現象が見られるようになったのです。

これは、自分がいじめのターゲットにならないように、いじめに加担する構造とよく似ています。

1984年、ニュージーランド・オタゴ大学のジェームズ・フリンが提唱したところでは、人類は20世紀以降、IQ(知能指数)を年々向上させていると言われます。1932年と1978年のIQを比較すると13.8ポイント高くなっており、1年に0.3ポイントずつ上昇していくというのです。これは「フリン効果」と呼ばれています(The mean IQ of Americans:Massive gains 1932 to 1978. (Flynn, J.R.(1984).)Psychological Bulletin,95(1), 29-51.)。

栄養状態の改善や、情報、知識を得るためのツールの充実によって人は着実に知能が上がっているはずなのに、互いをけなし合い、不毛に消耗し合う正義中毒がどんどん重篤になっているというのは、なんとも皮肉な話です。

元々は人間も動物と同じ、ただ生まれて、食べて育ち、起きて寝て、子を産み育てて死んでいくだけの存在だったのに、なまじ脳を発達させてしまったために苦しむようになってしまった。互いにバカと罵り合いながら、解決しようのない、そもそも解決する気もない争いを続けているのが人間という種の特徴なのだとしたら、最も悲しい生き物だと言えるかもしれません。

炎上ビジネスに踊らされる「正義中毒者」たち

一方、他人の粗探しに奔走する正義中毒の人たちを一歩引いたところから冷ややかに俯瞰している人もいます。そのなかには、大勢の正義中毒者をコントロールすることで、うまくビジネスにしてしまう例もあります。いわゆる「炎上ビジネス」と呼ばれるものです。

正義中毒者は常に、自らを絶対的な正義と確信できる不正義を、飢えた動物のように求めています。ですから、これをエンターテインメントビジネスとして考えれば、わざとわかりやすい失態を演じて、彼らに餌を供給し、その代価として報酬を集める仕組みが成立するわけです。

わかりやすい不正義の発生で世論が沸騰しているタイミングで、意図的に不正義とされている側をかばったり、正義のポジションで非難している人を厳しく批判する、というのも有効なタクティクス(戦術)です。

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