「仕事を選ぶ人」は幸せになれない"残念な真実" 名物記者が語る「量が質を凌駕する」という真理

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それで、案の定、下手になってるんです。文章の基本が崩れていたり、構成が弱くなってスピード感が落ちていたり。すると、若い子たちは「近藤さん、これ直されちゃったんです。前の方がいいと思うんです」って文句を言う。

絶対、そんな文句を言うな。下手になってていい。「ありがとうございました。勉強になりました」とにっこり笑って頭を下げていろ。

文章をいじられて、下手になってしまった。そんなこと、小さなことなんです。局地戦を戦うんじゃない。ビッグピクチャーを見ろ。

NOと言わない。すべての発注にYESと言う。それで、なにがしたいんですか? 最終目的はなんでしたっけ?

幸せになりたいんですよね。〈仕事〉によって、ハッピーに、ナイスになるんですよね。

もう少し具体的に考えると、「いいライター」になりたいんですよね? いろんな媒体から発注が来るようなライター。原稿を出すたびに「おもしろい」「独自だ」と言われるライター。やがて、大きなテーマを書ける。ライフワークを見つけられる。それがビッグピクチャーですよね。

まだ駆け出しの記者が、デスクや編集者に文章を直されたからって、いちいち御託を並べるな。そういう小うるさいひよっこライターと、「勉強になりました」と受け入れ、グラブを構えて「次、カモン」みたいに準備してるアグレッシブなライターと、どちらが使いやすいのかってことです。

〈仕事〉するやつが、〈仕事〉できるようになる

相手の立場に立ってみる。相手の論理構造を理解する。これは、働く人間にとって死活的に重要です。

・NOと言わない
・局地戦を戦わない

そういう態度でいれば、洪水のように仕事が押し寄せます。そして書けば書くほど、うまくなる。そのうえに、書き手としての立場も強くなる。趣味直しをしてくるデスク・編集者が、勝手に手を入れられなくなる。

もう、空気が変わるんです。あまりに忙しい売れっ子ライターには、「こいつの原稿に下手に手を入れちゃまずいな」という空気が流れる。

無能なデスクほど、そういう空気だけは分かる。彼らは空気を読むから。ポジション取りだけで生きてきたから。

この話は、ライターに限らないです。学生時代からずっと貧しかったので、いろんなアルバイトをしてきました。皿洗いに居酒屋のホール係、調理人の見習い、ビル掃除にホテルのベッドメイク、土方、家庭教師、八百屋の配達にレジ係……。

でも、アルバイトだろうとなんだろうと、口がうまいやつじゃなくて、だまって、陰で、誠実に働くやつ。そういうのが、正社員からも一目置かれる。じきに、くだらない嫌みもなくなる。難癖をつけられなくなる。

書くやつが、書けるようになるんです。〈仕事〉するやつが、〈仕事〉できるようになるんです。トートロジーです。

量が質を凌駕する。

次ページなにをしていたかというと、筋トレです
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