松下、YKK、大震災 街の電器屋は逆境で育つ--ケーズホールディングス会長 加藤修一《上》

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利益率は業界トップ 効率経営の秘密

郊外の大型店にこだわり、都心には見向きもしない。水戸を拠点に、目の届く範囲で出店を進めるうちに関東全域に広がった。ポイントカードは発行せず現金値引きで還元し、気がつけば全国に360店超。64年間も増収を続けてきたことが、ケーズ流の実力を物語っている。

07年にケーズ傘下となったデンコードーの井上は、「最初はがんばらないことに抵抗があった」。それまでは残業しながら売り場の作り方に知恵を絞り、販売コンテストで社員の力を上げてきた。だが加藤に「考えずに決められたことをやってください」と言われ、従うことにした。

結果、残業はほとんどなくなった。「お客様に迷惑をかけなければ、明日やれることは明日にしようとケーズは会社として認めている」。がんばらなくていいので社員はうれしいし、残業代も減る。「生産性を追求する手法は、ある意味でロボット的。でも笑顔やお辞儀、商品管理といった基本を繰り返すうちにコツがわかってくる。匠に通じる世界で、理にかなっている」と感心する。

電機メーカーのケーズ担当者も「徹底したローコスト経営」と舌を巻く。勤務体系は独特だ。店頭への品出し、レジ打ちはパート社員に任せる。接客は社員が担当し、時間を割いてサービスする。分業体制で1人が抱える仕事数を大幅に抑え、作業の負担を減らす。

POS(販売時点情報管理)システムを通し、1個でも商品が売れると自動発注されるようになっている。人為的な欠品ミスも防げるし、店長も店舗運営に専念できる。小まめな積み重ねで直近の売上高経常利益率は6・4%と、売上高が3倍のヤマダと肩を並べてトップクラスだ。

一方、メーカーとの付き合いでは昔ながらの慣習を残す。新店のオープン準備では、商品搬入のために200人が応援にやってくる。すると11時半には弁当とお茶を配り、15時にはパンとコーヒーを振る舞う。よそでは見られない光景だ。「ケーズなら応援人員も喜んで行く。大事にしてくれていると感じる」(電機メーカーのケーズ担当者)。

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