SFは「時間」を通して"命"をどう描いたのか? 「シン・ゴジラ」からひもとく進化の到達点

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両生類は変態する脊椎動物であり、水中で生まれ陸上で動き回ることができますが、水中でのエラ呼吸と陸上での肺呼吸をうまく切り替えなければなりません。大型の動物は、変態のコストが大きくなりすぎるので、脊椎動物で変態するものは、両生類以外にほとんどありません(円口類のヤツメウナギも変態するそうです)。

映画の中で、シン・ゴジラは、放射性物質を大量に取り込んだ結果、遺伝子が傷つけられ予測不能の変態を遂げることになったと説明されます。生物学的にはありそうもない現象ですが、もしかしたら、宇宙のどこかに変態する巨大生物が実在するかもしれません。

手塚治虫『火の鳥 未来編』が見つめる永遠の生命

手塚治虫の漫画『火の鳥』は、永遠の生命力を象徴する火の鳥を狂言回しに、人類や生命の存在意義を問い掛ける壮大な連作長編です。

「未来編」は、その時間的な終末に目を向けながら、再び始まりへと回帰する可能性をはらんだエピソードです(以下、ネタバレがあります)。

破滅的な核戦争によって、人類だけではなく地上のあらゆる生命が絶滅した遠い未来、火の鳥に永遠の命を授けられた科学者は、バイオテクノロジーで人造人間を作って文明を再興しようと試みますが、うまくいきません。

結局、彼は、海にわずかな有機物質を投げ入れます。物質進化を経て単細胞生物となり、長い年月の後にいつか知的生命へと進化することを夢見て。

地上の生命全体が絶滅と進化を繰り返す過程を描き出して、読者に圧倒的な感動を与えてくれる傑作です。もっとも、現実の世界は、手塚治虫の想像力よりも、もう少しせせこましいようですが。

地球における生命の進化は、細胞核のない単細胞生物(現在の真正細菌やアーキアに相当)から始まって、細胞核やその他の細胞内器官を有する単細胞生物、単細胞生物の共生から生まれた多細胞生物のように、断続的にステップアップしています。

地球では、このステップアップに数億年から十数億年の時間が掛かりました。もし、進化には常にこの程度の時間が必要だとすると、ある惑星に文明を持つ知的生命体が登場するまでに、少なくとも数十億年は掛かることになります。

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