ギリシャ離脱か残留か、悲劇は最終幕へ

猶予は72時間、歯車一つの狂いも許されない

新たな融資の実行主体はEUの金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)となる。ESMによる融資決定には理事会を構成するユーロ圏財務相の全会一致の賛成が必要となる。ESMには緊急時の採決規定があり、ECBの資本金構成比に準じて各国に割り当てられた投票権で85%以上の賛成が得られれば、融資を実行することが可能となる。この場合、フィンランドなど投票権が小さい国が反対したとしても融資を実行することが出来るが、27.1%の投票権を有するドイツが反対する限り、融資を実行することはできない。また、ESMにはつなぎ融資の制度がなく、当面の資金繰り危機を回避する方法も不透明だ。

欧米メディアにリークされたドイツのショイブレ財務相が作成したとされる文書では、ギリシャがさらなる緊縮を受け入れるか、一時的にユーロ圏を離脱するかの2つの選択肢を提案している。

前者は、ギリシャが議会の支持を得て改革案を迅速かつ大幅に改善させることが必要とし、具体的な改善策として、①ギリシャの優良資産を外部機関の管理下に移管して徐々に民営化する、②欧州委員会の監視下で行政の運営能力強化や非政治化などの改革を進める、③財政目標を逸脱した場合に自動的に歳出を削減する法制度を整備する、ことを挙げている。そのうえで、新たなプログラムによる最初の資金支援が開始されるまでの間、さまざまなつなぎの金融措置を組み合わせて対応するとしている。

ドイツが示した「ユーロ圏離脱、EU残留」案

後者は、債務の持続可能性と信頼のおける実行の見通しが事前に確保されない限り、①ギリシャは一時的なユーロ離脱に関する迅速な協議の場を与えられ、②必要があれば少なくとも向こう5年間にわたってパリクラブ(主要な債権国が債務国との間で債務軽減を協議する非公式会合)のような形での債務再編を可能にする、③こうした形でなければギリシャがEUの構成国であり続けながら十分な債務削減を行うことはできない、④ギリシャは一時的なユーロ離脱時もEUにとどまり、成長を促進するための支援、人道支援、技術支援を受けられる。

ドイツが提案するギリシャの一時的なユーロ離脱がEUの法体系の下で可能かどうかは必ずしも定かでない。EU条約にはEUからの離脱規定(EU基本条約第50条)があるが、ユーロ圏からの離脱規定はない。ユーロの導入基準を満たしたEU加盟国はユーロを採用することが義務付けられている。そのため、ギリシャがユーロ圏を離脱するには、EUから離脱する必要があるとの見方が一般的だ。ただ、英国やデンマークのように、EU加盟国でありながらユーロの採用を免除(オプトアウト)されている国もあり、ギリシャにこうした特例を認めることも出来なくはない。

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