ギリシャ離脱か残留か、悲劇は最終幕へ 猶予は72時間、歯車一つの狂いも許されない

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これとは別に、EUの価値基準に違反した国に対する一時的な権利停止に関する規定(同第7条)を適用することも考えられる。つまり、ギリシャが財政規律に違反し、債務の返済を履行しないことをEUの価値基準に対する重大な違反と見做し、単一通貨ユーロを利用する権利を一時的に停止する。この場合も、ギリシャはユーロを利用することが出来なくなるものの、EUにとどまることが可能となる。

ただ、いずれの場合もEU条約の法的拘束力から免れる訳ではない。一時的なユーロ離脱の間に債務軽減を行うことで、財政ファイナンスを禁じた非救済条項(同第125条)を回避できるとのドイツ側の主張の根拠は明らかでない。

金融危機は避けられないのか

ギリシャでは政権交代の可能性が高まった昨年末以降、銀行の預金流出が加速している。6月末の資本規制(預金の引き出しや海外送金の制限など)の開始により、預金の流出ペースが抑制されているものの、最低限の国民生活と企業活動を維持するためにも資本移動を完全に停止することは出来ない。

ECBは通常、銀行の必要資金に30億ユーロ程度の流動性バッファーを想定して、ギリシャの銀行への緊急流動性支援(ELA)の利用上限を設定してきた。だが、6月24日以来、ECBはELAの利用上限を886億ユーロに据え置いており、その後の預金流出により、銀行の流動性は枯渇寸前とみられる。7日にはELAに適用されるギリシャ国債の担保価値の評価を厳格化し(担保のヘアカット率を引き上げ)、銀行が利用可能な担保を絞り込んだ。

ギリシャの銀行関係者によれば、銀行の流動性バッファーは数日内にも枯渇する可能性がある。支援再開で合意できない状況下で、ECBがELAの利用上限を引き上げるのは困難だろう。そのため、当面の銀行破綻を回避するためには、預金の引き出し制限をさらに強化し(1人1日あたり60ユーロを例えば30ユーロにする)、流動性の枯渇を食い止める必要がある。

だが、財政資金が枯渇したギリシャ政府が新たな金融支援なしに、20日に予定するECBが保有する35億ユーロの国債償還に応ずる余裕はない。20日までに金融支援を受け取れなければ、ECBはギリシャの銀行へのELAの供給を打ち切る可能性が高い。ELAは健全な銀行を対象とした一時的な流動性支援の仕組みで、ギリシャが国債償還を履行しない場合、クロスデフォルト(ある債務がデフォルト事由に抵触すると、他の債務もデフォルトと見做される)条項が発動し、ギリシャの銀行が保有する国債や政府短期証券の担保価値が目減りし、銀行の資本が毀損する可能性があるためだ。

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