行列のできる「かき氷」店が真夏に店を閉めたワケ 「さすがに抵抗があったが限界も感じていて」

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私はお客さまを信じているので、それでも整理券を配ります。でも、本当に帰ってきてくれるかはわからない。ほとんどは帰ってきてくださるのですが、なかには帰ってこない人もいる。テレビなどでとり上げられると来店者数が一気に増えますが、20~30組も帰ってこないということもありました。

整理券を配り終わってしまうと、せっかく来てくださった人に「今日の分は終わりました。ごめんなさい」と頭を下げ続けます。でも、実際には席が空いていることもある。矛盾を感じ、このまま続けていたら心がこわれるなと思い始めました。

「新しい夏の風物詩をつくる」

一方、デパートの催事場なら、こんなつらい思いをする必要はありません。催事への参加を決めたのは、これが大きな理由でした。

店と違って並ぶ場所は十分にあるし、ある程度の行列ならむしろ宣伝にもなる。エアコンの効いた屋内なので、熱中症の心配もありません。

こうして真夏の間は店を閉めることに決め、デパートの担当者さんとともに「地元・藤沢に新しい夏の風物詩をつくる」という目標を掲げてスタートしました。

一年じゅうかき氷の店 埜庵の20年 絶品シロップレシピつき
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結果的には、鵠沼の店で営業しているときよりもたくさんの人に、夏の思い出に残るかき氷を提供できたと思います。

特に小さなお子さんを連れた家族連れが多かったので、いつかその子たちが大人になったとき、「夏にデパートで、家族みんなでおいしいかき氷を食べたよね」と思い出してくれたら、私にとってはとてもうれしいことです。

この催事は、地元の人たちが足を運んでくださる夏のイベントとして定着し、建物の改装で催事場が閉鎖になる2022年まで続きました。

終わってしまったのは残念ですが、いまは東京・町田にある別のデパートで、新たな夏のイベントとして定着しつつあります。

この記事には続きがあります。
(2)「かき氷も日本料理のうち」老舗店が追求する潔さ
(3)人気かき氷店が伝授「マンゴーシロップ」の作り方
石附 浩太郎 かき氷店「埜庵」店主

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いしづき こうたろう / Koutarou Ishiduki

1965 年、東京生まれ。大学で商品学を学んだあと、音響機器メーカーを経て、2003 年、一年中かき氷を提供する店「埜庵(のあん)」を鎌倉にオープン。2005 年、神奈川・鵠沼海岸へ移転。独創的なシロップを使ったかき氷を求めて全国からリピーターが訪れ、かき氷ブームのパイオニアとしてかき氷業界を牽引している。

https://kohori-noan.com/

Instagram:@kohori_noan
 

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