なんとかビジネスとして成り立つように
「水商売」という言葉があります。『広辞苑』には「客の人気によって成り立ってゆく、収入の不確かな商売の俗称」とあります。
現代においても、電気やガスは民営化されているのに、水道だけは依然として「官」。ほかのライフラインと違い、水は生きていくのにそれだけ必要なものということです。
「商いは水もの」というとおり、営利を目的とする商いに「水」はほとほと向いていないのかもしれません。お客さまに聞かれると、「こんなのはビジネスじゃなくてギャンブル」という話をよくします。
ギャンブルなら、長い間やっていれば必ず負けます。いつかは退場しなくてはいけません。それは嫌なので、なんとかビジネスとして成り立つようにと考え続けてきたのが、この20年間です。
「埜庵(のあん)」は「一年じゅうかき氷を食べられる、初めての専門店」と紹介されることが多いのですが、これが本当に正しいかどうかは、かき氷の歴史を調べている私にも実はわかりません。私が始めたときに、たまたまなかったということかもしれません。
埜庵がオープンした2003年頃は、冬にかき氷を食べる人たちはほんのわずかで、まだまだ「変わり者」でした。その意識が変わってきたのは、つい最近のこと。この10年ほどの歳月は、かき氷にとって、明治以来のかき氷の歴史がひっくり返るくらいの大きな変革期だったのだと思います。
私がかき氷の店の店主として過ごした20年間は、そんな「かき氷の変革期」を内側から定点観測をしているようなものですから、その驚きたるやすさまじいものでしたし、同時にいつも冷静な目で眺めてきました。
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