行列のできる「かき氷」店が真夏に店を閉めたワケ 「さすがに抵抗があったが限界も感じていて」

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2011年5月にシロップのレシピ本を出したあとは、「家でつくれるおいしいかき氷を教えてください」という雑誌やテレビの取材がけっこうありました。

東日本大震災の影響で、多くの人がなるべくエアコンをかけずに涼をとろうとしていたその夏。同じ時間にいっせいに打ち水をする、といったエコな暮らしの方法をみんなが探していて、かき氷もそのひとつだったのです。

それからの2~3年で、「かき氷専門店」と名乗るお店が急に増えました。

かき氷が人気らしいと世の中に知られるようになり、2013年7月には、日本経済新聞・土曜別刷りの連載「何でもランキング」の「並んでも食べたい ふわふわかき氷」というテーマで、埜庵はなんと東日本第1位に選ばれました。

店を飛び出しデパートの催事へ

この頃になると行列ができるほどお客さまが来てくださるようになり、お店としての評判も、ありがたいことに少しずつ上がっていったと思います。ですが、スタッフもだいぶ増えて、みんなの給料を払うと自分の分が残らないという状況になっていました。

会社を辞める前にいろいろなお店を食べ歩いていたときは、行列を見ると「もうかってるなぁ」などと勝手に思っていました。

行列する店をつくればもうかる、という単純な考えしかもたずに店を始めたので、行列する店はつくったのに全然もうからないという現実に直面して、どうすればいいかわかりません。

飲食店はやっぱり規模を拡大していかないといけないのだろうかと思うものの、かき氷はつくりおきも通販もできないし、とにかく大規模化には向かない……。

子ども2人の進学も控えて、家計はまったく余裕なし。なんとかしなくてはとあせりながら、先のことを模索していました。

そんなとき、少しずつ声をかけていただけるようになったのが、デパートの催事への参加です。

初めてお引き受けすることになった2015年を皮切りに、東京では新宿と町田、神奈川では横浜と藤沢のデパートで催事に参加してきました。

そのつどデパートの担当者さんと知恵を出し合い、オペレーションや厨房の配置などを練り上げ、催事を成功に導くにはどうすればいいかと考え抜くことのくり返し。その蓄積はいまの埜庵にとって、一番の財産です。

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