石田衣良は、なぜ出版業界に絶望したのか 「小説家と過ごす日曜日」に込めた思い
難しいと思われるかもしれないけど、誰にでも勉強すればできることなんですよ。たとえばCIAの日本担当、専門家がいますよね。日本に関するレポートを書いて、オバマ大統領にあげるというようなことをしている。でもその人たちは秘密の情報源は持っていないんです。先ほどいった世界観みたいなのを作って、ずっと日本をウォッチし続けているだけ。情報源の9割から9割5分はネットや新聞、週刊誌などオープンになっている情報です。
つまり、普通の人も勉強して世界観を作ってしまえば、情報機関の専門家に近いところまで行けるということです。
――誰でもスパイと同じぐらい、情報を扱う力を持てるということなんですね。『小説家と過ごす日曜日』でも、そういうテーマを扱いますか。
自分で考えるのは好きだけど、人にしゃべるのはあまり好きじゃないんだけどな(笑)。でも、皆さんが興味を持ってくださるようなら、取り上げるようにします。
ウェブメディアで伝えていきたいこと
――ウェブメディアで伝えていきたいことは何でしょう?
ネットを見ている人、テレビを見ている人、本を読んでいる人というふうに、今、バラバラになっていると思うんですね。お互いの世界をつなぎ合わせるようなメディアにしたいですね。たとえばネットしか見ない人には、本の面白さを伝え、本の読者にはネットの世界の面白さも伝えたいということです。
読み応えがある分量ですが、金曜発行なので、週末、寝る前に10分、15分、読んで楽しんでもらえればいいなと思います。読み手と個人的につながれるような感じ、そういうアットホームな雰囲気を意識しながら書いていくつもりです。それは文庫を買ってくださる、つまり50円を払ってくださる読者よりは、課金制のほうが厚めになりますから、そこの部分はちょっと心してやりたいと思っています。
――会員数はどのくらいを想定していますか。
課金額が高い分、小ロットでもボリュームが出るというのが特徴です。読者が1万人まで行けば、メルマガの世界ではかなりのトップランナーですよ。ただ、とはいえまだまだ、天井には達していないと思います。もう1ケタ2ケタ、増えてもおかしくないですよ。
そうやっていくつかの段階でうまく収益をあげていって、生活のためのベースを作るのが、これからの音楽家とか作家の新しいカタチかもしれません。そのためのテストケースになれると面白いなと思います。チャレンジしがいのある仕事です。
――小説への取り組みは?
「エブリスタ」で書いている「SAKASHIMA—東島進駐官養成高校の決闘」の前半がまとまりまして、近く講談社から発売される予定です。近未来の日本が舞台で、軍国主義の国という設定です。サカシマというのは、現代の日本のさかさまという意味も込めていますが、主人公の少年の名前でもあります。少年同士の陰謀、殺し合いなど、僕の好きな少年マンガの世界を意識して書いています。
――少年マンガは今でも読みますか。
子どもも読みますし、うちにはマンガ部屋もあります(笑)。藤田和日郎さんの『からくりサーカス』とか、田辺イエロウさんの『結界師』とか…。トップ5ぐらいまで言えますよ。少女マンガはやはり「24年組」に属する萩尾望都さん、大島弓子さん、山岸凉子さんなど、すばらしいと思います。マンガについてはあまり質問されることはないですが、面白いですね。ウェブメディアで取り上げようかな。
――意外な話も伺うことができました。ありがとうございました。
はい。「小説家と過ごす日曜日」は初月無料なので、気楽にのぞいてみてください。
(撮影:梅谷秀司)
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